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#148 「in Gloom」 2012-12-21 (Fri)

クリスマス 今年はどこの 酒を飲む?


 憂鬱、破滅、退廃、崩壊、闇、終末…。どんな言葉を使ってもこの呪われた場所にふさわしい名を表すことは出来ない。そう思ったがこの場所を「絶望の荒野」と名付けたのは私だった。しかし、ここにあるのは絶望ではなかった。それ以上の何かとてつもない…[未完]

 ここは絶望の荒野のどこかにあるブラックホール・スタジオのような場所。この絶望の荒野はあまりにも広くて、ここがその端にあるのか、それとも中心に近いところにあるのか、そんなことは気にならないのですが、絶望以外に何も無い場所に淋しく現れたブラックホール・スタジオのような場所にマイクロ・ムスタファがやって来て、そのあまりの絶望感から一編の未完の小説を書き終えたところでした。未完なのになぜ書き終えることができるのか?と思うかも知れませんが、いつものように彼は未完の美学なので未完でも書き終えることが出来るのです。

 小説を書き終えてマイクロ・ムスタファがまた途方にくれている時でした。彼の目の前に突然Little Mustaphaが現れました。そうなのです。サンタの孫娘さんにいつの間にか恋人が出来てしまったショックで、かれはバッティングセンターではなく、今度は絶望の荒野にやって来てしまったようです。

Little Mustapha-----あれ、ここはどこだ?

マイクロ・ムスタファ-----ああ、助けに来てくれたんですか?!

Little Mustapha-----あれ?キミがいると言うことは。…ああ、そうか。ここが絶望の荒野か。キミは今のボクに比べたらそれほど絶望してないじゃないか。

マイクロ・ムスタファ-----え?一体どうしたというのですか?まさか、また良くないことが起きたのでは…。

Little Mustapha-----絶望した人間にあんまり詳しい説明を求めないでくれるかな。こっちは絶望してるんだ。絶望以外したくないんだよ。知りたかったら該当ページを読んでくれよ。

マイクロ・ムスタファ-----そ、そうですか。これは何か良くないことが起きたようですね。…ふむふむ…。そうですか。やっぱり良くないことが起きているのですね。でも、あまりクヨクヨしていたら元の世界に戻れませんよ。

Little Mustapha-----何言ってるんだよ。絶望してるんだから戻る必要もないし。だいたい戻りたがっていたキミも戻れてないじゃないか。

マイクロ・ムスタファ-----そうですね。でもここに来て私は何かに気づいたような気がするのです。

Little Mustapha-----何か、って?

マイクロ・ムスタファ-----それは解りません。でも、ここには絶望以外の何かがあるのです。そんな気がします。

Little Mustapha-----よく解らないこと言って人の絶望の邪魔をしないで欲しいな。

マイクロ・ムスタファ-----そうですか。そうですね。絶望してるんですからね。


 こんなやりとりのあと、二人はしばらく黙り込んでしまいました。そして、あたりには静寂ではなく絶望に包まれました。しかし、その絶望は長くは続きませんでした。また新たな絶望がここにやって来たようです。

 絶望の荒野のブラックホール・スタジオのような場所に、他のメンバー達が次々にやって来たのです。


マイクロ・ムスタファ-----これは一体どういうことですか?

ミドル・ムスタファ-----ああ、もうダメです。ボクらはオシマイです。

マイクロ・ムスタファ-----どうしたんですか?

Dr. ムスタファ-----絶望しすぎて説明する気にもなれん。該当ページを読んだらいいんだ。

マイクロ・ムスタファ-----そんなこと言っても、あれから先はこっちに場面が変わってるから、そんなページないです。

ニヒル・ムスタファ-----仕方ないな。絶望してるから手短に話すぜ。せいぜいこれを聞いて絶望するんだな。犬サンタ君に今年のプレゼントの事を調べてもらったら、オレ達のプレゼントはなかったんだよ。

マイクロ・ムスタファ-----ええ?まさか!プレゼントとこれまでの話は関係がないはずです。

ミドル・ムスタファ-----もうどうでも良いですよ。もう終わりなんです。絶望なんです。

Little Mustapha-----ああ、そうだね。ボクのせいでみんな絶望だ。あの券を使う時に「プレゼントの件は除く」って言わなかったからね。

マイクロ・ムスタファ-----あなたまでそんなことを言って。

ニヒル・ムスタファ-----もう、どうでも良いから、みんなで絶望しようぜ。

Dr. ムスタファ-----そうだな。絶望だ。

マイクロ・ムスタファ-----…そうなんですか。


 そして再び絶望があたりを支配し始めました。絶望していない者には耐え難いこの絶え間ない絶望も、絶望した彼らにとってはただの絶望。そして、絶望せずにはいられない絶望の荒野なのです。

 さっきよりも長く絶望が続いた後に、マイクロ・ムスタファが静かに話し始めました。


マイクロ・ムスタファ-----あの…、ちょっと良いでしょうか。

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----ああ、なんだ。キミ絶望してたのか。

マイクロ・ムスタファ-----いや、無理してそのネタはやらなくても。絶望したまま聞いてくれて結構ですけどね。私、さっき一人でここにいる時にイロイロと見て回ったんですけど、面白いものを見つけたんです。

Little Mustapha-----キミは良くこんな場所で面白いなんて言葉を使えるね。

マイクロ・ムスタファ-----そうですけど。まあ、この場所に合わせて絶望的なものと言いましょうか。

ニヒル・ムスタファ-----それで何が見つかったんだ?

マイクロ・ムスタファ-----これなんです。「絶望の荒野の絶望の酒」です。

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----絶望の荒野の絶望の酒?!

マイクロ・ムスタファ-----無理してみんなで驚かなくても良いですけど。でも、これを飲んだら少しは気分が楽になったりするんじゃないですか。

ニヒル・ムスタファ-----何言ってるんだよ。オレ達は絶望してるんだぜ。

ミドル・ムスタファ-----そうですよ。そんなものを飲んだってどうにもなりません。

Little Mustapha-----うーん…。

Dr. ムスタファ-----どうしたんだ?

Little Mustapha-----いや、なんでもないけど…。

マイクロ・ムスタファ-----あなたはちょっと興味があるんでしょ。

Little Mustapha-----いや、ないこともない、ぐらい。

マイクロ・ムスタファ-----本当は飲みたいはずです。それに他のみんなも。絶望の荒野だからって絶望ばかりではダメだと思うんですよ。ちょっとは明るくなりましょうよ。

ミドル・ムスタファ-----なんだかいつものマイクロ・ムスタファとは別人みたいな発想ですね。

マイクロ・ムスタファ-----あれ、ホントだ!

ニヒル・ムスタファ-----まあ、この場所がそうさせてるんじゃないか。

マイクロ・ムスタファ-----そうです!まさにそれです!この絶望の荒野では誰しもが絶望しているから、絶望慣れしている私は快活な人間になっているのです!ああ、これはどう言うことでしょうか!私が快活に!生まれて初めて私に日の光が当たっているような!こんな気分を味わえるなんて、私はなんて幸せな…


 絶望の荒野では自分が一番明るい性格になれると知ってテンションの上がったマイクロ・ムスタファですが、話している途中でどこかへ消えてしまいました。Little Mustapha達は「おや?」と思ったのですが、絶望のあまり考える気もなかったので、とりあえず「絶望の荒野の絶望の酒」を飲み始めることにしました。すると、そこへまた別の人、というか犬がやって来ました。それは予想は出来たと思いますが犬サンタ君です。


犬サンタ-----くぅん…。くぅ〜ん…。

Little Mustapha-----あれ、今度は犬サンタ君だ。

ミドル・ムスタファ-----どうしたんですか?

犬サンタ-----くぅ〜ん…。

Dr. ムスタファ-----ここに来たってことは絶望してるって事なんだろ。

犬サンタ-----くぅ〜ん…。

ニヒル・ムスタファ-----絶望しすぎて人間の言葉を忘れてしまったんじゃないか。

Little Mustapha-----あるいは、面倒だから犬語になってるとかかな。せっかく絶望仲間がそろったんだし、絶望の酒で乾杯だな。

ミドル・ムスタファ-----そうですね。犬サンタ君も一緒に絶望しましょう。

犬サンタ-----くぅ〜ん…。くぅ〜ん。

ミドル・ムスタファ-----どうしたんでしょうか。鼻で犬サンタ君の持ってきた袋をつついていますけど。

ニヒル・ムスタファ-----なにか言いたいことがあるんじゃないか。

ミドル・ムスタファ-----ちょっと見てみましょうか。…袋の中には犬サンタ君のMacBook Airが入ってますが。ちょっと開けてみますね。

Dr. ムスタファ-----そこに絶望の原因があるのか?

ミドル・ムスタファ-----ソフトが立ち上がっていて、これはメールソフトのようですが。サンタの孫娘さんからのメールですね。

犬サンタ-----くぅ〜ん…。

Dr. ムスタファ-----それ、読んでみたらどうだ。

ミドル・ムスタファ-----ええ、そうしますけど。えーと「犬サンタちゃん。スゴいことが起きちゃった!さっき彼と食事してたらね、いきなりプロポーズされちゃった♡  えっ?!って思ったけど、もちろんオッケーに決まってるよね!」

Little Mustapha-----(ガーン…。ガーン…。)

ミドル・ムスタファ-----「それでね、犬サンタちゃんにはちょっと残念な事もあるんだけど。彼ってね、犬が大の苦手なんだって。だからね私も犬なんて大嫌いってことにしちゃったの。だから、犬サンタちゃんには悪いんだけど、もう帰ってこないでね。ゴメンね。でも犬サンタちゃん大好きだよ!(絵文字でペコリ)それじゃあバイバイ♡」

犬サンタ-----くぅ〜ん…。

Dr. ムスタファ-----おお、なんて可哀想な犬サンタ君。

ニヒル・ムスタファ-----ともに絶望の酒を酌み交わして絶望しようではないか。

ミドル・ムスタファ-----そうです。そのとおりです。そしてサンタの孫娘さんはなんてことをするんだ。あの人がこんなことをするなんて、これで絶望しないワケにはいきません。さあ、早く絶望の酒を開けてください。…あれ?

Dr. ムスタファ-----Little Mustaphaはどこに行ったんだ?

ニヒル・ムスタファ-----絶望の荒野の絶望のバッティングセンターにでも行ったのか?

ミドル・ムスタファ-----さあ、どうでしょうか?

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