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#151 「Epoch」 2013-12-24 (Tue)

今回は 何が起きてる? クリスマス

ミドル・ムスタファ-----あれ?マイクロ・ムスタファがいませんよ。

マイクロ・ムスタファ-----いますよ、ここに。安全になったようなので私がブレーカーを上げてきたところです。それよりも…。

Dr. ムスタファ-----嗚呼…!犬サンタ君。

Little Mustapha-----どうしよう。犬サンタ君が…。犬サンタ君が…。何でか知らないけど、ボクが撃たれそうになってたんだ。それを犬サンタ君が咄嗟に飛び出して盾になってくれんだ。真っ暗だったけどボクには解ったんだよ。どうしよう。犬サンタ君!犬サンタ君!

ミドル・ムスタファ-----犬サンタ君が撃たれたんですか?

Little Mustapha-----解らないけど、動かなくなっちゃったんだよ。でも血とか出てないし。ああ、どうしよう。サンタの孫娘さんにはなんて言ったら良いんだ?こんなことだとプレゼントもサンタの孫娘さんまでも、全ての希望を失うことになるよ。

ニヒル・ムスタファ-----こんな終わり方はイヤだぜ。なあ、犬サンタ君!実は冗談なんだろ?

ミドル・ムスタファ-----動きませんね…。

一同-----…。

Little Mustapha-----よし、解った!

Dr. ムスタファ-----なんだ?

Little Mustapha-----今からでも奇跡を信じたって良いよね。どうせこのままじゃ何にもないまま、イヤなことばっかりになってしまうんだし。

ニヒル・ムスタファ-----どうするって言うんだ?

Little Mustapha-----きっと犬サンタ君の名探偵の鞄にはアレが入っているに違いないんだよ。

ミドル・ムスタファ-----アレって?

Little Mustapha-----奇跡を起こす奇跡の酒。サンタの国のサンタの酒に決まってるじゃん。

ミドル・ムスタファ-----まさか、この状況で飲むって言うんですか?

Little Mustapha-----どっちにしたって犬サンタ君は楽しいのが好きだったんだし。

Dr. ムスタファ-----そうだな。それに何もしないよりは少しでも希望をもたないとな。

Little Mustapha-----そうと決まったらこの鞄の中から…ほら!あった。サンタの国のサンタの酒は濃度を増して600%!

ミドル・ムスタファ-----じゃあ、バケツに水を入れて割りましょうか。

Little Mustapha-----それじゃあ、みんなコップに酒をくんで。せーの…!

一同-----レッツ・サンタの酒!

:警察署


 スケアリーと刑事が数人で昨日から今日にかけての防犯カメラの映像を確認していた。それだけの映像を全て確認する時間はなかったので、誰かが留置場や押収した銃の保管庫に入れるような時間帯に絞って確認が行われた。しかし、夜の人の少ない時間などを調べても異常はないように思われた。

 異常がなければ、こんどはもう少し監視の目が多い時間帯の映像という順で調べていくしかない。しかし、これは途方もない作業のようにも思われてスケアリーは頭を抱えそうになっていた。するとそこへモオルダアがやってきた。

「ちょいとモオルダア、どこへ行っていたんですの?」

「いや、まあ」

モオルダアは彼の少女的第六感と呼ばれるある直感によりある場所に行ってきたのである。その場所とは9年前の事件現場だった公園だったが、そこへ行っても何もなくて仕方なく気まずい感じで警察署まで歩いてやってきたのである。

「それよりも、ニコラス刑事から連絡があったんだよ」

「どうしたんですの?Little Mustaphaは大丈夫なんですの?」

「ああ、多分」

「多分、ってどういうことですの?」

「ニコラス刑事が逃亡したサンタを逮捕したんだよ」

それを聞いていた刑事達がちょっと嬉しそうにモオルダアの方を見た。これで面倒な確認作業はしなくて済むようだ、ということだ。

「それでサンタは?」

「ニコラス刑事に聞いたところ、逃亡サンタは失敗したと言っていたらしいんだよね。恐らくそれはLittle Mustaphaの暗殺に失敗したということらしいんだけど」

「それは良かったですわね」

でもスケアリーにはまだ何か納得いかない部分があるようだ。モオルダアもそれは同様である。

「ただ、あのサンタの格好の人が暴れ回ってるあれが酷くなってるようなんだ。それで、ニコラス刑事もサンタをここに連行できる状態じゃないとか。一応近くにいたパトカーに連絡して逃亡サンタは確保できてるってことだけど」

「それで、モオルダア。この事件はこれで終わったと思いますの?」

「いや」

「そうですわね。見えない殺人者なら暗殺に失敗することはなさそうですものね」

モオルダアはスケアリーのこの発言を意外に感じたのだが、これだけ異様なことが起きればスケアリーでも理解不能なことを認めざるを得なくなってくる。

 二人は引き続き防犯カメラの映像を調べることにしたが、刑事達は警察的には逃亡サンタの逮捕で用は済んだということになったので、いそいそと部屋を出て行ってしまった。

「それで、確認はどこまで進んだの?」

「まだ時間にして20時間は残っていますわよ」

「もしかして、留置場なんかに人が少ない時間帯を中心に調べてる?」

「そうですけれど…。あなたの言いたいことは解りますわ」

モオルダアは見えない殺人者ならどんな時間帯でも侵入出来ると言いたいようだ。

 モオルダアはサンタが逃亡する直前から調べることを提案した。いずれにしてもどこに正解があるか解らないような話なので、スケアリーも異論はなかった。

 留置場の出入り口が映っている映像をみると、鍵の開けられた扉からサンタが逃げていく様子が映っていた。

「あんなに簡単に出て行ったんですの?見張りは誰もいなかったのかしら?」

「どうだろう?例のサンタ姿の暴徒たちで慌ただしかったということもあるけど、こんなに簡単に逃げられるというのはおかしいよね。もしかするとカメラ以外には見えないような何かがあったのかも知れないけど」

モオルダアはそう言ったが、そんなことを考える余裕はあまりないように思えた。そして、こっちの映像よりも保管庫のほうの映像の方に何かがあると言い出した。サンタは自分で扉を開けて出て行っているし、もしも見えない犯人がいるのなら、その役目は鍵を開けるだけ。しかし保管庫の方には誰かが入っていかないと銃を持ち出すことが出来ないという、そういう理由のようだ。

 モオルダアの理屈はいつも核心がなく脆い感じがするのだが、スケアリーも今は反論している余裕がないのは知っている。こうしている間にも次の被害者が出ているかも知れないのだ。

 二人は保管庫の入り口が映されている映像をサンタが逃亡した時間から遡って確認していた。こちらの方はいつ動きがあったのか解らないので、途中で早回しをしたり、停止したりしながらの作業になったが、その中で二人が同時にアッ!と思うような場面が映っているのが解った。

 そこには人は誰も映っていなかったのだが、保管所の扉がひとりでに開いて、そして閉まったのである。そして、しばらくするとまた同じことが繰り返された。

「ちょいと、モオルダア」

スケアリーは言ったが、言われなくてもモオルダアも気づいている。モオルダアは部屋を出て行こうとしていた。

「ちょいと、どこへ行くんですの?」

「あの保管庫だよ。もしも人間だとしたら、ドアに指紋が残ってるかも知れないし」

「解りましたわ。あたくしはもう少し映像を確認してみますわ」

モオルダアが出て行くとスケアリーはさらに映像を確認していた。

 先ほどの問題の部分を何度も確認していると、何も映っていないはずなのに、ドアが開く前後に画面に陽炎のような揺らめきが映っているような気がしてくる。それが本当なのか、これまでの話の流れからそういう風に見えてしまうのか。スケアリーはできるだけそういうことは忘れて公平な視点で見ようと心がけていた。

 彼女が画面に集中していると、急に彼女の後ろで声がして、彼女は驚いて振り返った。しかし、そこには誰もいない。誰かが外で何かを言ったのかも知れないと思ったスケアリーは立ち上がってドアを開けた。そして、そこでギョッとさせられることになった。

 ドアを開けると、あのゾンビのような姿になった横屁端アナの姿があったのである。

「はい、現場の横屁端です」

「ちょいと、あなた…。どうやってここに…」

「そんなことはどうでも良いのです。あなたは今何が起きているのか解りますかぁ?」

「何を言っているんですの?」

「それは大ハズレ!なんとキツネ色の男にLittle Mustaphaの居場所を知られてしまいました」

「どういうことですの?」

「果たしてLittle Mustaphaの運命やいかに!」

スケアリーが何かを聞き返そうとしたのだが、その時入り口に近い部屋の方から大声で怒鳴る声が聞こえてきた。それでなくても慌ただしい今日の警察署内だったのだが、さらに混乱している様子だった。

「てめぇ、女子アナなめてんのか?暴行とか傷害とか女子アナには関係ねぇんだよ!相手がサンタの集団であろうと、なんであろうと、やられたらやり返すってのが女子アナなんだよ!」

どうやら人気女子アナの内屁端が連行されてきたようである。外ではサンタ姿の若者達が暴徒と化しているのかも知れない。向こうの部屋の方を見ながらそんなことを思っていたスケアリーだったが、ハッとして視線をもどした。しかし、もうすでに遅く、そこに横屁端アナの姿はなかった。

 しかし、横屁端アナの言っていたこと。それはただ事ではないような気がしていた。そこへモオルダアが戻ってきた。

「どうしたの?」

とモオルダアが聞いたが、ゾンビのような姿でしかも一瞬にして目の前から消えてしまう横屁端のことをモオルダアに話すのは危険なことに違いない。それを知った瞬間に彼の頭の中には事件とは関係のない超常現象話が溢れかえってしまうだろう。

「なんでもありませんわ。それよりもドアはどうでしたの?」

「鑑識の人に頼んできた。すぐには結果は出ないと思うけど」

それもそうだった。スケアリーは横屁端のことを誤魔化そうと、どうでも良いことを聞いてしまったことをちょっと後悔していた。モオルダアはそんなことに気づく様子もなく、また監視カメラの映像を確認しようと部屋に入っていった。しかしスケアリーはこのままで良いのか?と思った。というより、このままではいけないと思っていたのだ。何事も科学的に説明が付かなくてはいけないと思っている彼女なのだが、今はそういうことを気にしてはいけない時に違いない。今回は最初から何か説明の出来ないイヤな感じがあった事件なのだ。そして、それを非科学的だからといって無視することは出来ないような気がしている。

 直感という言葉では説明できないさらなる感覚とでも言おうか。そういうものが横屁端アナに姿を変えて彼女自身に何かを伝えているような、そんな感じなのである。

「モオルダア!」

急に大きな声で呼ばれたモオルダアは驚いて振り返った。

「ここにいても意味がありませんのよ」

「どういうこと?」

「Little Mustaphaの命が危ないと思いますの」

「でもLittle Mustaphaを狙っていた逃亡サンタは捕まったし…」

「そういうことではありませんのよ」

スケアリーは彼女の感覚だけで導き出した考えをモオルダアにしても良いものか?と思っていた。しかし、そんなことを考えて時間を無駄にすることも出来ないと思った。

「透明の犯人ですのよ。キツネ色の男ですわ!そいつがLittle Mustaphaの居場所を知ったんですのよ」

「キツネ色?キツネ目じゃなくて?」

モオルダアは何ことだか解らないような反応である。

「犯人の真の狙いはあのサンタを逃がすことじゃなかったんですのよ。逃亡サンタをLittle Mustaphaの家に向かわせて、そしてLittle Mustaphaの家の場所を知るのが目的だったんですの」

モオルダアは「どうして?」と思ったのだが、スケアリーがこんなにも真剣にこんなことを言うのには何か理由があると思った。それが言葉で説明できるような理由ではなくても、モオルダアもそういうことは受け入れやすいタイプなのでスケアリーの言うことを聞いた。そして、Little Mustaphaの家に向かうことにした。


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