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#151 「Epoch」 2013-12-24 (Tue)

クリスマス いったい何が 起きている?

12月24日:ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)


 いきなり犬サンタ君がやってきて、(ある意味)衝撃の事実を教えられたLittle Mustapha達ですが、やはりいろいろと納得いかないところがあるようです。


Little Mustapha-----なんかいろいろと解らないことだらけのような気もするんだけど。とりあえず犬サンタ君が来た理由を教えてもらおうか。

犬サンタ-----解ったんだワン。でも、これはもしかすると気にする必要のないことかも知れないんだワン。

ミドル・ムスタファ-----そう言われると逆に気になりますけど。

犬サンタ-----とにかく話すんだワン。悪い悪魔を倒したのはさっき話したけど、実を言うとまだ問題が残っている可能性があるんだワン。それで万が一のことを考えてご主人様から調べてくるようにと指示があったんだワン。

Little Mustapha-----それでシャーロック・ホームズなの?

ニヒル・ムスタファ-----そこは確認しなくていいんじゃないか?それよりも、問題って何だ?

犬サンタ-----このシリーズを遡って読んでいけば解るって言われたんだけど、読むのが遅くて良く解ってないんだワン!でも万が一ってことだから、とりあえずみなさんは心配しなくて良いんだワン!

Little Mustapha-----ボクらが心配しないで誰が心配するんだ?犬サンタ君も何が問題か解ってないんでしょ?

犬サンタ-----そうなんだワン。それはおかしな話だワン!アハハハだワン!

ニヒル・ムスタファ-----笑って誤魔化そうとしてるぜ。

犬サンタ-----でも、危険が迫れば犬サンタの嗅覚で嗅ぎつけるから、それが何か解らなくても大丈夫なんだワン!

ミドル・ムスタファ-----っていうか、問題っていうのは危険なことなんですか?また恐ろしい目に遭わないといけないんですか?

犬サンタ-----万が一だから大丈夫なんだワン!

Little Mustapha-----うーん。でも、そんなネタ振りがあると起きないわけにはいかないような気もするしな。

Dr. ムスタファ-----でも何が起きるか解らないんなら心配のしようもないぞ。

Little Mustapha-----それもそうだな。まあ、犬サンタ君も「万が一」って言ってるし、ここは事業を引きついた本物のサンタを迎えるために楽しく盛り上がりましょう!

ミドル・ムスタファ-----そうしましょうか。

犬サンタ-----そうなんだワン!楽しいのが一番なんだワン!

マイクロ・ムスタファ-----あの…ちょっと良いですか?

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----ウワッ!キミいたの?!(かワン?)

マイクロ・ムスタファ-----やっぱりやるんですか…。

Little Mustapha-----なんていうか、盛り上がってきたので、またやりたくなってしまったのでありますよ。

マイクロ・ムスタファ-----それはどうでも良いです。しかし、みなさんは気づかないんですか?

ミドル・ムスタファ-----何をですか?

ニヒル・ムスタファ-----留守番電話にはなにも変化はないぜ。もっとも、変化があったら犬サンタ君の話が嘘になってしまうけどな。

犬サンタ-----そうなんだワン!

マイクロ・ムスタファ-----そうではありません。さっきも言ったように、すでにサンタの格好をした人が殺されているんですよ。それがどういう事件なのか今はまだ解りませんが、それが犬サンタ君の言う問題と関連しているとしたら、なにかとてつもない…(未完)

一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----ウワッ!ここでまた未完ネタ!

12月17日:例の街


 スケアリーは一人で二つ目の事件のあったスーパーへやってきていた。なぜ一人なのかというと、モオルダアの顔はしばらく見たくないということなのだが。詳しく書くと、数日前にモオルダアから「ニコラス刑事に会って、彼もLittle Mustaphaについて調べている」という事を聞かされたのだ。モオルダアはそのニコラス刑事が定年間際のニコラス刑事であるということを敢えて黙っていたので、スケアリーはすっかり甥の若くて男前の、あの憧れの人であると勘違いして大いに盛り上がってしまったのだ。モオルダアもそれを解っていてわざと解りづらい説明をしていたのだが、そういう風に女性をからかうのは良くないということを今はモオルダアも思い知っただろう。彼は今、目の周りに青アザが出来た状態で捜査を続けているようだ。

 それはともかく、スケアリーはスーパーの奥の事件現場へとやってきた。さっき書いたこととは関係なくここで彼女が調べようとしていることはモオルダアがいない方がスムーズに調べられる事でもある。

 事件以来スーパーには元々なじみだった客はほとんどこなくなり、今はたまたま近くを通った人が何かのついでに入ってくるぐらいで、店内は閑散としていた。そういう状況なので警察の正式な捜査というワケではなくても、店主はスケアリーが来たことにそれほどイヤな顔はしなかった。殺人事件が起きた店ということで、危機を迎えているスーパーなので誰でも良いから人がいる方が店主としても嬉しいのかもしれない。

 事件のあった部屋は警察の指示で今は使用されていない。なので事件が起きた時と中にあるものはほとんど同じ状態のはずである。スケアリーは部屋に入ると鞄から写真を取りだした。それは事件直後に警察の撮影した現場の写真である。スケアリーはその写真とこの部屋とを見比べて、遺体がどのような状態でこの部屋にあったのか、ということを確認していた。

 警察のその後の調査によると犯行に使われたのは10.9mm弾ということだった。それはいわゆる44マグナム弾という事になるのだが、そうだとすると色々と矛盾点が出てくるような気がしたのである。

 この部屋は決して広くないし、遺体の倒れていた向きからしても犯人はかなりの至近距離から発砲したはずである。そうでなければ部屋の外から窓越しに撃つことも可能かも知れないが、この部屋にはそれが可能な場所に窓が付いていない。

 そうなるとやはり犯人もこの部屋にいて至近距離から発砲したということになるが、それだと別の事が気になるのである。44マグナムのような強力な銃で至近距離から撃たれたとしたら、銃弾は体を貫通するはずなのである。しかし、貫通した銃弾によって出来るはずの銃創はこの部屋のどこにもない。消えたのは銃弾だけでなく、それによる傷も消えてしまっているのである。

「謎ですわね…」

スケアリーはそうつぶやいてからもう一度部屋の中を見回した。部屋の上の方に小さな換気用の窓。しかもそれはほとんど開けられる事がないという。だとしたら何なのか?

「きっと何かを見落としているに違いありませんわね」

スケアリーはさらにつぶやいてから部屋を出て行った。

 サンタクロース。クリスマス。プレゼント。そういうものがどうしてこんな恐ろしい殺人事件につながるのか。スケアリーはほとんど客のいない店内を見て少し切ない気分になった。そして、どうしてこんな時期に自分は難解な殺人事件の捜査などしているのか。それはエフ・ビー・エルの捜査官として考えるべき事ではないかもしれなかった。

 このスーパーではサンタが殺されたというのに、店内はクリスマスムード一色の飾り付けである。皮肉なことにサンタ殺人事件の現場になったために客の減ったこのスーパーの客寄せの手段はそんなクリスマスキャンペーンぐらいしかないのだ。

「どうしてみんなこんなにクリスマスにこだわるのかしら?」

スケアリーの頭にそんな疑問がよぎった。そして、なんでそんなことも解らないのか?とも思っていた。もしかすると、あたくしは子供の頃から恵まれすぎていたのかも知れませんわね。子供の頃クリスマスと言えば、暖かい家庭に両親の愛。そしていつも望んだプレゼントがツリーの下に置いてありましたわ。でも今は解っていますのよ。誰もがそんな幸せなクリスマスを過ごしてきたのではない、ということを。

 それはきっと、未だにサンタクロースに手紙を出し続けているLittle Mustaphaのような方にもいえることなのかも知れませんわ。クリスマスとは、いったい何なのかしら?きっと誰もそんなことは考えずに喜んだり悲しんだりしているに違いありませんわ。本当はそんな事を思う日ではないのに。

 そんなふうに感傷的な気分になっていたスケアリーだが、この経営が怪しくなってきているスーパーの売り上げに少しでも貢献しようと「チョコあ〜んぱん」買ってから外に出た。


 このスーパーに付いたときにはまだ明るかったが、外に出てみるとすでに暗くなっていた。午後五時過ぎ。本来ならこのスーパーの前は買い物客で賑わっているはずだったが、何度も書いているように客足が遠のいているので、スーパーの前も寂しい雰囲気である。

 スケアリーはチョコあ〜んぱんの箱を開けて一つ口の中に入れてから考えていた。ここはLittle Mustaphaの家からも近い場所である。なので行こうと思えばもう一度話を聞きに行くことが出来るのだが、それは本当に必要な事だろうか。先ほどからの感傷的な気分が彼女にそう思わせているだけなのかも知れないが、Little Mustaphaは何かに苦しんでいるのではないか、と思えてならなかった。しかし、それが事件に関係があるのか?というと、全くない。なので、Little Mustaphaに話を聞きに行ったところで、それは全くの無駄足になるのだが。スケアリーは以前に話を聞いたときのLittle Mustaphaの様子からして、彼が事件に関わっているとは思えなかったのだ。そして、彼が不運にもこのような事件に巻き込まれていて、それに気づかずに命を落とすなんて事があったら、それはもしかすると自分の責任になるかも知れない、とスケアリーは感じていたのだった。

 彼女はもう一つチョコあ〜んぱんを口に入れると、ゆっくりと歩き出した。向かう先はLittle Mustaphaの家のある方角だったが、彼女はまだどこに行くのか決めてないまま歩き出したのだった。そして、頭の中にはあらゆる思いが巡り巡っていたので、注意力も散漫になっている。そんな状態でいきなり彼女の前に人が現れて、スケアリーは思わず悲鳴を上げそうになって立ち止まった。

 そこまで驚かないでも良いと思うかも知れないが、そこにいた女性の容姿を知ったら、悲鳴を上げてもおかしくない、と思えるだろう。その女性はさっきからそこにいたのか、あるいは路地から出てきたのか、考え事をしながら歩いていたスケアリーには解らなかったが、そんなことよりも、その女性はあまりにも顔色が悪い。

 悪いと言うより、まるで死人のように青白い顔をしている。何日も何も食べていないかのように頬はこけて、その目からは輝きが全く感じられない。それどころか、黒目が白っぽく変色しているのが一番気味の悪いところでもあった。

「ちょいと…!」

スケアリーは悲鳴を上げる代わりに言った。目の前の女性は目の焦点が合っていないようだったが、その白くなった目はスケアリーを見つめているようだ。そして、その視線を動かさないままゆっくりと口を横に広げで笑ったような表情になった。

 やせ細った顔で笑うその表情にスケアリーはゾクッとしていたが、その顔はよく見るとどこかで見たような顔でもあった。

「ちょいと、大丈夫ですの?あなたは…。なんていうか、どこかでお目にかかったことがあったかしら…?」

ほとんど骨だけみたいな腕を上げて手を口の前に持ってくると、死人のような女性はさっきの気持ち悪い笑顔のまま答えた。

「はい!…こちら、有能な新人女子アナの横屁端です…。それでは、ここで重要なお知らせをしたいと思います…」

ずっとこのコーナーを読んでいる人には、また「オォ!」ってなる展開なのですが、スケアリーの前に現れたのは、夕方のニュースで新人女子アナとして活躍していたものの、異次元世界に迷い込んだとされ、そのまま行方不明となっていた横パンこと横屁端アナだったのである。しかし、新人女子アナとして活躍していた頃の面影は全くなく、今は死体のような顔色で、ガリガリで、時にはゾンビ風でもある。

「キツネ色の男を止めるのです…。Little Mustaphaを死なせてはいけません。…でも、それはあなた次第なのです…。Little Mustaphaを救うのはあなたなのです…。キツネ色の男を止めるのです…!」

スケアリーは唖然としながら聞いていた。この死体のような女性はいったい何を言っているのか?それにどうしてLittle Mustaphaの事を知っているのか。さらに「キツネ色の男」とは何なのか?色々と気になったのだが、その前に無免許ではあるが医師としてスケアリーは別のところが気になった。

「ちょいと、あなた大丈夫ですの?顔色が悪すぎますわよ。それに…あなた、テレビに出ていらした方じゃなくて?」

「はい…!こちら、現場の横屁端です…。なんと、ただいま正体がバレたようです。そうなのです。しかし、今は違うのです。私、横パンこと横屁端は、今や地獄の軍団の一員となっているのです…」

これはBlack-holic読者のための情報なのでスケアリーにはワケがわからなかった。

「どうでも良いですけれど、Little Mustaphaを死なせない、ってどういうことですの?あの方に何か危険が迫っているんですの?」

スケアリーが聞くと、ゾンビ風の横屁端はゆっくりと口を開こうとしていたのだが、そのときスケアリーの後方から大げさなエンジン音を立てて狭い道を飛ばしてくる迷惑な車がやってきた。その車はスケアリーが邪魔だったようで、クラクションを連打してやかましく近づいてきたので、スケアリーは驚いて道の端の方へ避けるしかなかった。

「何なんですの?!」と思いながら車の去っていった方を見ていたスケアリーだったが、ハッとして横屁端の方に向き直ると、すでにそこには横屁端の姿はなかった。

 スケアリーはさらに「何なんですの?!」と思ってあたりを見回したのだが、ゾンビ風の横屁端の姿はどこにもなかった。しかし、彼女の言った言葉はいつまでスケアリーの心の中にこだまして、そこに暗い影を作っているような気がしていた。


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