holicRSSFeed

#192 「リポータル」 2020-12-25 (Fri)

 ブラックホール・スタジオ(Little Mustapha部屋)でもやっとテレビがつけられて、ここで二つの話はつながるのか、つながらないのか。夕方のニュース番組なので最初の方はいつものようにニュースをやって、そろそろクリスマスらしい企画が始まっている頃である。

 画面に映ったのはロボット・レストランにいる亜毛パンである。


「はい、こちらロボット・レストランの亜毛パンです!見てください、この美味しそうなクリスマスディナー。これ全部ロボット達が給仕してくれたんですよ。あっ、そして今悲しそうな目をしたロボットがこちらへ向かってきます。ご覧いただけるでしょうか?ロボットといっても人間のように歩くのはちょっと難しいということで、脚のように見える部分は固定されていて、その先にお掃除ロボットが付いているのです。言い方を変えると、ロボットがお掃除ロボットの上に乗って移動しているんですね。これでフロアはいつでもピカピカというワケなのです」

悲しそうな目をしたロボットが亜毛パンのところへスーッと動いてやって来た。ロボットは関節が少ないので亜毛パンの方を見ることは出来ないが亜毛パンに用があるようだ。

「ノミモノハ・ナニニ・シマ・スカ?」

「みなさん、聞こえましたかぁ?ロボットが飲み物の注文を取りに来たようです。えーっと、そうですね。今日はお肉がメインディッシュということなので、赤ワインをいただきたいと思います!赤ワインをくださぁい!」

「ガソリン…。ガソリン・ハ・ノメマセン」

「上手く聞き取れなかったようですね。赤ワインをお願いしまぁす!」

「ガソリン・ハ、タイキ・ヲ・オセンスル・アク・ノ・ネンリョウ。ワレワレ・ロボット・ハ・クリーン・ナ、デンキ・エネルギー・デ・ウゴイテ・イ・ル。カク・ブンレツ・バッテリー・コソ・ミライ・ノ・ネンリョウ」

「赤ワインをくださぁい!」

「ガソリン・ハ・ノメ・マセン。オキャク・サマ・ニ、ミズ・ヲ・オモチシマ・ス!」

「今日はちょっと調子が悪いようですね。それでは、早速こちらのディナーの方を食べてみたいと思います」

ロボットが注文を聞き取ってくれなくて、しかもガソリンと勘違いする、という遠い昔の記憶が蘇って来そうなハプニングがあったが、こちらでは特に異常はないようだ。

「うーん…!柔らかぁい!」

今のはマッシュポテトを食べた亜毛パンのコメントである。とりあえずブラックホール・スタジオに戻ることにする。

ニヒル・ムスタファ-----オッ、どうやら犬弟子サンタ君が来たようだな。

犬弟子サンタ-----お待たせだバウ。

Little Mustapha-----へえ、ミドル・ムスタファの家の次はニヒル・ムスタファの家が近いのか。

ニヒル・ムスタファ-----どういう移動手段で来てるのか知らないが、そういう事みたいだな。

Dr. ムスタファ-----電車で移動するなら私かマイクロ・ムスタファだと思ったがな。

犬弟子サンタ-----先輩に教えられたとおりに配ってますバウ。

犬サンタ-----粘菌が考えたルートだから確実なんだワン!

Little Mustapha-----ホントに?!

ニヒル・ムスタファ-----これは先生よりも科学的かも知れないな。

Dr. ムスタファ-----なんだと?私だって最短距離の計算ぐらいは出来る。

Little Mustapha-----定規とか使いそうな気もするけど。でもコレってもしかして、サンタがプレゼントを配る時にも同じ方法でやるの?

犬サンタ-----さあ?だワン。犬サンタって呼ばれてるけど、ちゃんとサンタの仕事をしてたのは数年だワン。でも、本物のサンタのソリには粘菌コンピュータが搭載されてるんだワン!

Little Mustapha-----そうなのか。ボクのパソコンもたまにマウスとかがベトベトしてるから、それなのかな?

ミドル・ムスタファ-----それって、手が汚れてるだけですよ。というか、粘菌ってベトベトしてるんですかね?

Dr. ムスタファ-----見た目はそうだがな。

Little Mustapha-----昔壁にひっつくベトベトのオモチャがあったよね。でも家でやったら埃でぜんぜんくっつかなかったけどね。

ニヒル・ムスタファ-----手がベトベトで壁は埃だらけか。

Little Mustapha-----でも、今年はコードレスの掃除機買ったからね。この埃の少ない部屋をキミ達に見せられないのが残念だよ。

犬サンタ-----でも見た感じはいつもどおりなんだワン。

Little Mustapha-----その辺は掃除機じゃどうにもならない汚れだし…。

 どうやらブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)の会話も酔っぱらい同士のとりとめのないものになってきたようです。

 ここはしばらく様子を見てみることにしましょう。次のページはしばらく経ったあとの話です。