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#192 「リポータル」 2020-12-25 (Fri)

 今のところどんなことが起こりそうなのかも解らない今年のクリスマス。それでも留守番電話にメッセージが残されていることを示すランプが勝手に点滅しているという、いつもの異常な事態だけは同じように起こるのです。

 そして、いつものように放置しておくワケにもいかないということで、Little Mustaphaが再生ボタンを押すようです。

Little Mustapha-----それじゃ、押すけどね。今日はみんな別の場所にいるから気楽で良いよね。ピッ!


留守番電話-----ゴゴ・ゴゴゴジ…ゴゴ…ゴゴ・ゴゴ…フン。イッケン…ピーッ!「全く何なのかしら?あたくしがコンピュータや機械に疎いから、リモート会議のアプリを使いこなせないとでも思っていらっしゃるの?それとも、またあたくし抜きでクリスマスパーティーを開いたってことですの?それに、去年はなんなんですの?あれ。最後まであたくしのメッセージが残されている事にも気づかないで。本来なら訴訟に発展してもおかしくない事態ですのよ。でも今年は我慢のクリスマスですから、そこまではいたしませんわ。あたくしはこれからいつものラジオ番組のクリスマス特集ですけれど、謝罪するにはあたくしに電話してくださいな。あたくしのお屋敷の電話番号は666の…」ピーーーーッ!メッセイジ…オ・ワ・リ。


鹿場根-----怒っているようですけど、大丈夫なのですか?

Little Mustapha-----これはまあ、いつものことだから、気にしなくても大丈夫だと思うけど。

ミドル・ムスタファ-----でも、なんだか心配になりませんか?勝手にメッセージが残されてるって。

Little Mustapha-----そうだけどねえ。このメッセージも恐怖のクリスマスも毎年起きることだからね。この二つが関連しているのか、あるいは違うのかっていうのが解らないよね。どっちかが起きて、どっちかが起きないってこともあれば関係ないということかも知れないんだけど。

マイクロ・ムスタファ-----しかし、警戒はしておいた方が良いんじゃないですかね。

ニヒル・ムスタファ-----といっても、気になるテレビのリポートは今放送されてないぜ。

Little Mustapha-----ホントだ。今年の流行とか振り返ってるけど。ボクらこういうのには全く縁がないからな。

Dr. ムスタファ-----あれか、「きつめのやばい」とかいうやつ。

ニヒル・ムスタファ-----それは天才的な間違いなのか、わざとなのか?

Little Mustapha-----タンスから昔の服が出てきて着てみたら、サイズが合わなくて着られないっていう、中年あるあるだな。

Dr. ムスタファ-----なんだそれは?私のいってるのは漫画のアレだぞ。

ニヒル・ムスタファ-----本気で間違ってたのかよ。

Dr. ムスタファ-----科学的にはあってるだろ?

Little Mustapha-----科学っていっても、相対性理論とかが出てくるワケの解らない世界ならあってるかもね。

Dr. ムスタファ-----ほれ見ろ。

ニヒル・ムスタファ-----ほれ見ろ、じゃなくて。今のはほぼ間違ってるって意味だぜ。


 留守番電話にメッセージがメッセージが残されていたり、怪しい感じにはなったのですが、テレビで今年の流行を振り返ってたりするので、またしても緊張感がなくなってしまいました。

 仕方がないので、ここで女子アナ達の様子を見てみることにする。

 今日はなぜか人の全然ない場所でのリポートを続ける人気女子アナのウッチーこと内屁端。タダでさえ新人の美人女子アナの亜毛パンに人気で押され気味なのだが、このままで大丈夫なのだろうか?

 しかし、これまでの事を考えると、何か作戦があるに違いない。そして、番組で一年の流行を振り返っている間にも、その作戦は継続中だったようだ。次の出番を待っている内屁端のところへADが駆け寄ってきた。


「ウッチーさん。様子を見てきました」

「おお、そうか。どうだった?」

念のために書いておくが、多くの女子アナはスタッフとの会話では女子アナ口調ではなくなるのである。そして、女子アナの裏の一面を見せる時にはもっと汚い言葉遣いにもなる。

「ウッチーさんの言うとおり、怪しい雰囲気というか、オーラみたいなのはありましたね」

「やっぱりにらんだとおり。これで最後に一発逆転で人気回復なんだが。腹屁端のやつはどうなってんだ?」

「かなり近くまでは来てるようですが」

「それで中継はあと何回?」

「予定ではあと2回ですが。でも腹屁端アナを待つ必要があるんですか?うちらだけで独占中継すれば充分だと思いますよ」

「あまいな、AD。そんなことは前にもやってるの。今回はモンスターに襲われる腹屁端をこのウッチーが助ける。あるいは、そうならなくても悲惨な状態になった後輩の腹屁端の姿を見て、悲しんで泣き叫ぶ。世の中はそういう刺激を求めてるんだよ。そういうこと知ってないとやっていけないよ、AD」

「はい、解りました。あっ、そろそろ次の中継です」

「よし、じゃあリポートしながら、さりげなく目的地に近づくぞ」


 どうして彼女が人の少ない住宅街にいるのか、ということが明らかになってきたようだ。その住宅街とはまさにブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)のある街である。内屁端アナはこの街で何度も恐ろしいモンスターに遭遇していたので、今年もそのようなことが起きると見越しているようだ。

 さらにそのモンスターに腹屁端を襲わせて、中継を刺激的なものにするのが内屁端アナの狙いだったようである。なんとも恐ろしいこの執念。亜毛パンの写真集宣伝作戦がカワイイものに思えてしまうのである。