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#213 「第2の始まり」 2025-12-25 (Thu)

 テレビではクリスマス女子会が続いていた。今は亜毛パンの新写真集の撮影秘話などとともに出演者が写真集を見ながらトークをしているところである。

「うーん、そうねえ。擬音での表現に頼らずに、体で表現出来るところは全てやるってことは心がけてたかな」

「そうなんですか。この景色とかもすごく素敵だと思います」

「うっ…、うっ…」

「え、誰ですかぁ?擬音部分はあまり読むとテレビではマズいですよ」

「うっ…、うっ…」

出演者達はお互いを見合っていたが、誰も擬音部分を読んでいる人はいないようである。

「うっ…、うっ…」

内屁端はこの声に聞き覚えがあったようだ。そしてあの爆弾人間を目の前で見た時の恐怖を思い出していた。

 他の出演者達も何か様子が変だということに気付いて辺りを見回した。すると彼女達が爆弾人間に囲まれていることが解ったのである。

「うっ…、うっ…」

周りにいた大量の爆弾人間達が一斉に悲痛の呻き声をあげた。これにはさすがの女子アナ達も恐ろしくなって悲鳴を上げることとなった。


亜毛屁端-----え、待って!なにこれ、本当に爆弾人間なんているの?

内屁端-----だから言っただろ。本物の爆弾だって!

腹屁端-----もしかして、この「うっ…うっ…」という音。爆発する前じゃないでしょうか?

宇絵座-----やだ、死にたくない!


 宇絵座もさすがにここではキショー君を使って乗り切るようなことは出来なかった。しかし袋小路Ⅴはそうでもなかったようだ。


袋小路1号-----みなさん、落ち着いて!

内屁端-----何言ってるんだ!これが落ち着いていられるかよ。オマエらも早く逃げないと爆発するぞ!

袋小路2号-----完全に囲まれた状況で逃げ場はないようです。

袋小路5号-----ここは私達に任せて。まずは落ち着いてください。


 50000人以上から選ばれたメンバーとそれと同等の実力を持つ新メンバー。少数精鋭と言ってもこれはあまりにも優秀すぎる気もするのだが、怯える女子アナ達と爆弾人間の間に立って袋小路Ⅴのメンバーは彼女達を囲む爆弾人間と向かい合ったのである。


袋小路1号-----爆弾人間達。ここはオマエ達のいるべき場所ではありません。すぐに呪われた地へと帰るが良い。

爆弾人間達-----うっ…、うっ…。

袋小路3号-----それは苦しみの叫び声。気の毒に。オマエ達は生まれてくるべきでなかったと思っているのか。

袋小路5号-----あなた達の怒りや悲しみが私達にも良く解ります。

袋小路2号-----オマエ達はその苦痛から解放されなければならない。

袋小路4号-----我々にまかせるんです。いつか必ずオマエ達の恨みを晴らすことが出来でしょう。

爆弾人間達-----うっ…、うっ…。


腹屁端-----あ、これはどういうことでしょうか?爆弾人間達が振り返ってこの会場から出て行こうとしています。そして、やっと我に返って女子アナとしての役割を再開した腹屁端が、先程見苦しいところがありましたところ深くお詫びいたしましてよろしかったでしょうか、ということで。ここで気を取り直してまた亜毛パンの写真集「擬音」の紹介をしていきたいと思います。


 この状況でまだ写真集の宣伝をするのか?という気もするが、そこは大人の事情ということで仕方ないのだろう。とにかく袋小路Ⅴの予想外の活躍により騒動は収まったようである。

 その頃ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では。


Little Mustapha-----いくら少数精鋭といっても、あれは出来すぎじゃないか?

コマリタ-----ここで特別にお教えすると、今の出来事が演出、あるいは仕込みであった可能性は50%以上となっています。

ミドル・ムスタファ-----そんなのもAIで解るんですか?

コマリタ-----直接的なデータはありませんが、総合的に分析した結果そうなりました。

Dr. ムスタファ-----亜毛パンは演技でああいうことは出来ないぞ。

ニヒル・ムスタファ-----先生はもしかして亜毛パンのドラマとかもチェックしてるのか?

Dr. ムスタファ-----まあ、科学的にはな。

Little Mustapha-----もう科学がなんなのか解んなくなってくるけど。まあ、仕込みだとしたら、それを知ってたのは袋小路の五人で、女子アナ達は本気で怯えてたって感じかな。それで50%以上という数字も出てきたんだと思うけどね。

コマリタ-----面白い考察ですが、私が算出した50%以上とあなたの考える50%以上は違うようです。

マイクロ・ムスタファ-----それよりも、大丈夫なんでしょうか?あの爆弾人間は画面からは消えましたけど、どこに行ったのかは解らないんですよ。

Dr. ムスタファ-----でもあれはヤラセだったんだろ?

ニヒル・ムスタファ-----そういう可能性もあるってことだけどな。

ミドル・ムスタファ-----まさかあの爆弾人間たちがここへやって来るってことじゃないでしょうね。

マイクロ・ムスタファ-----少し気になったのですが。テレビで爆弾人間に向かって「呪われた地へ帰る」ということを言ってましたよね。

Little Mustapha-----まさか。それは偶然だと思うけど…。