LM式対処法
ここはいつもの次元のブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)です。追加の料理と酒で更にクリスマスっぽく盛り上がるはずでしたが、やはり色々と気がかりなことがあって思うようにクリスマスの雰囲気にならないといった感じです。
Dr. ムスタファ-----ということでな。全員が近眼になる薬を開発出来れば透明人間になる必要はなくなるんだよ。
ニヒル・ムスタファ-----近眼だって人が近くにいれば気付くぜ。
Little Mustapha-----それよりも全員が近眼になる薬っていうのは、一人が使うと周りがみんな近眼になるっていうこと?
ミドル・ムスタファ-----それはかなり強力な薬って感じですが。
Dr. ムスタファ-----薬といっても飲むだけじゃないからな。例えばガスのような物を散布するとか。
ニヒル・ムスタファ-----それじゃあ、使った本人も近眼にならないか?
Little Mustapha-----透明人間になりたい理由を考えたら、それは良くないよね。
ミドル・ムスタファ-----理由って、もしかして女風呂とかそういうことですか?
Little Mustapha-----あ、そうやって具体的なことを言ってしまうと、今の時代は厳しいからね。逮捕されちゃうよ。
ニヒル・ムスタファ-----何にしても先生の発明は妄想なんだよな。
Dr. ムスタファ-----キミは解ってないな。充分に発達した科学が妄想と区別出来ないっていうこともあるんだし。
Little Mustapha-----確かに区別出来てないみたいだけど。でも良く考えたらボクも風呂に入る時には眼鏡もコンタクトレンズもしないから、実は知らない人が後ろにいたりすることもあるのか?
ニヒル・ムスタファ-----だから、人がいれば気配で気付くだろ。
Little Mustapha-----そうか。だいたいなんでボクに気付かれないように一緒に風呂場にいる必要があるのか?って感じだけど。女の人は女の人で男風呂を覗きたい願望とかあるのかな。見たいと言っても顔を両手で覆って指のすき間から覗くって感じかな。
ミドル・ムスタファ-----なんでそんなことを真面目に考察をしているんですか?
Little Mustapha-----そうだよね。クリスマスっぽくないからこの話題はこの辺にしておこうか。あ、でも人の気配といえば、最近この部屋に何かいるような気がすることがあるんだよね。部屋では眼鏡もするし、普段はコンタクトレンズだし、
ニヒル・ムスタファ-----なんだよそれ。さっき呪いがどうのって話もあったんだし、気味が悪いぜ。
Dr. ムスタファ-----呪いというのはそういう感じじゃないだろう。気配があるっていうのは霊とかそういうことだな。心霊学的には。
ミドル・ムスタファ-----心霊学も科学って言えるんですか?
Dr. ムスタファ-----ぱっと見だと漢字が「心理学」に見えたりするし、似たようなもんだろ?
ニヒル・ムスタファ-----違うと思うぜ。
Little Mustapha-----でもアレだよ。何かが起きているってことはそこにはちゃんとした理由があるからね。それをちゃんと解明しないで安易に霊とか呪いとか祟りとか、そういうことにしてしまうのは科学的ではないよね。
ミドル・ムスタファ-----そういえばさっき呪いを解いたとかそんなことを言ってませんでしたか?
Little Mustapha-----ああ、あれね。里梅屋さんが呪いとか言うからみんな心配になるかも知れないし、ここで呪いのようなものの正体について話しても良いかもね。
ニヒル・ムスタファ-----別に心配はしてないけどな。
ミドル・ムスタファ-----まあ、聞くだけは聞いてみたら良いんじゃないですか。
クリスマスの雰囲気どころか呪いの話になってしまいました。Little Mustaphaの言う呪いとはどういう事なのでしょうか?
Little Mustapha-----あれは今から二年前のことだったけど。何かの祟りかと思ったら実はパニック発作だったんだよね。
ミドル・ムスタファ-----それ、簡略化しすぎで何のことだか解りませんよ。
Little Mustapha-----クリスマスだし、呪いのことを詳しく話すのもアレかと思って。じゃあもう少し詳しく話すけどね。ある日突然体がおかしくなってね。これはもう死ぬんじゃないか?って気がしてきたんだけど。でもどこが痛いとかそういうこともないし、血圧も脈も正常だし。ついでに健康診断を受けたばっかりだったから、そういう状態の時に診断結果が送られて来たりしたんだけど、その結果もいたって健康ってことだったんだよね。
Dr. ムスタファ-----ああ、それはアレだな。パニック発作ってやつだ。
ニヒル・ムスタファ-----だから、それはさっきLittle Mustaphaが言ってただろ。
Dr. ムスタファ-----そうだったか?
Little Mustapha-----まあ、そうなんだけどね。でもそのパニック発作という答えにたどり着くまでが最悪な感じだったんだよ。どこが悪いってことでもないから治しようもないしさ。それなのになんだか死にそうな感じがずっと続いているんだよ。そうなってくると、これはもしかして誰かの呪いとか、何かの祟りじゃないか?ってことになってくるんだよ。
ミドル・ムスタファ-----そういうことで呪いだったんですか。
Little Mustapha-----でもボクだってこれが霊能者に治せるとは思わないからね。もう少しまともな方向で調べてたんだけど。そういえばパニック障害とかいうの最近を良く聞くな、ってことになって調べてみたらさ。なんと症状の中に「死にそうな気がする」というのがあったんだよね。
Dr. ムスタファ-----それはまさしくパニック発作だな。
ニヒル・ムスタファ-----だから、そうだって言ってるんだが。
Little Mustapha-----まあ、そうなんだけど。死にそうな気がするけど実際には死なないということが解ったら治すのは簡単だよね。脳と神経が上手く連動してないってことだから、簡単には治らないんだけどね。対策としてはリラックスしてユックリ呼吸するとかそんな感じだったんだけど。ちょうどその頃「少林寺三十六房」とか見てたから中途半端にリラックスとかじゃなくて座禅を組んでみることにしたんだよ。
Dr. ムスタファ-----それはそれで宗教っぽい感じがしないか?
Little Mustapha-----でも瞑想したいワケじゃないし悟りを開くワケでもないからね。呼吸をコントロールできれば自分の体をコントロールできるって感じでね。時間をかけて息を吐くというのは簡単そうで意外と難しいんだよ。でもこれが出来るようになるとけっこう効果的でパニック発作だけでなくて、ずっと前から謎だった冷水シャワーを浴びると窒息しそうになるのもなくなったんだよね。というか、アレもある意味パニック発作だという事かも知れないし。
ミドル・ムスタファ-----それで科学的座禅って言ってたんですか。どうでもイイ話かと思ったらけっこう長い話になりましたね。
Little Mustapha-----ついでに言うと、運河の橋とか歩道橋が恐くてダッシュして渡ってたのも普通に渡れるようになったし。そんなことよりも呪いの話に戻るけどね。
Dr. ムスタファ-----でも呪いは座禅ってことでまとまったんじゃないのか?
ニヒル・ムスタファ-----座禅ではないけどな。
Little Mustapha-----そうなんだけどさ。パニック発作ってストレスとかが原因ってことになってるんだけど。その辺がどうも気になるんだよね。特に二年前の春ってコロナの規制がなくなるってことで、これから何をしようか?ってワクワクしてる状況だったし、ストレスどころじゃないってことだったからね。
ミドル・ムスタファ-----じゃあ、何が悪かったんですかね。
Little Mustapha-----要因となったストレスではない何か、っていうのが実は呪いだった可能性もあるよね。
ニヒル・ムスタファ-----なんだよそれ。結局この部屋は呪われてるのか?
Little Mustapha-----でも座禅でなんとかなるから大丈夫だけど。
マイクロ・ムスタファ-----いや、ちょっと待ってください。これは興味深い話だと…。
これまで黙って話を聞いていたマイクロ・ムスタファが何かに気付いたようですが、丁度その時部屋にある留守番電話機が鳴り出しました。
さっき里梅屋さんがかけてきた時とは違う音で、勇ましいファンファーレのような音楽です。
ミドル・ムスタファ-----これって初代宇宙戦艦ヤマトのオープニングのイントロですかね。
Little Mustapha-----シリーズの途中から端折られちゃう部分だよね。良い曲なのに。
ニヒル・ムスタファ-----そんなことより出なくて良いのか?
Little Mustapha-----まあ、直接ベランダに行った方が早い気もするけど、せっかくなんで出てみようか。
いつものようにハンズフリーモードでLittle Mustaphaが電話に出ました。
留守番電話機-----「遅くなったんだワン。早く開けるんだワン!」
ミドル・ムスタファ-----なんだか来た理由とかも言わないですし、普通にパーティーに参加しに来た感じになってますね。
留守番電話機が-----「良いから早く開けるんだワン。今日はちょっと薄着だから寒いんだワン!」
Little Mustapha-----ということは艦長ではないんだな。今開けるからちょっと待って。
誰がどんな格好で来たのかだいたい解りますが、Little Mustaphaがベランダへ出られる大きな窓を開けました。