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#213 「第2の始まり」 2025-12-25 (Thu)

後片付けは大変

 Little Mustapha達は部屋に散乱している爆弾人間達のパーツを眺めていました。足下に落ちているパーツを爪先で突いてみると軽いパーツは簡単に動かすことが出来ました。

 Little Mustaphaはこの素材の感じは知ってる気がしたので手を伸ばしてパーツを一つ持ってみました。


Little Mustapha-----これって、3Dプリンタで作ったみたいな感じだけど。

Dr. ムスタファ-----AIが3Dプリンタで作ったのか?なんかあまり科学的じゃないな。

ニヒル・ムスタファ-----いや、どこからともなく湧いて出てきたって感じよりは科学的なんじゃないか?

犬弟子サンタ-----でも、去年出現したAIの生成物はこんな素材じゃなかったんだバウ。

ミドル・ムスタファ-----良く解りませんが。結局こんな中がスカスカの人形にあんなに恐がってたってことですかね。

犬サンタ-----それはなんだか悔しいんだワン。

Little Mustapha-----それはどうだけど。これってボクらが片付けないといけないのかな?

Dr. ムスタファ-----出てくる時は湧いて出てきたのに、消える時は勝手に消えないのか?


コマリタ-----どうでもイイですが、沢山の疑問があるではないですかぁ?

Little Mustapha-----あ、コマリタ。そういえばいなくなってたけど、まさかアンパン2がコマリタだったってことじゃないよね。

コマリタ-----それはもっともな疑問かと思われますが、仕様の関係で喋り方が似ていてもコマリタとアンパン2は全くの別物!先程アンパン2がこのコンピュータに強引にログインしてこようとするのを検知したので、コマリタは一時的に退避して様子をうかがっていたのです。

Little Mustapha-----来るのが解ってたんなら、その中で待ち伏せしてアンパン2を倒したら良かったのに。

コマリタ-----それは映画か何かの話か解りませんが、あなたのその発想には正直ガッカリです。

Dr. ムスタファ-----科学と妄想の区別がついてないからなあ。

ニヒル・ムスタファ-----それは先生も一緒だろ。

コマリタ-----とにかく、アンパン2が去るのを待ってから再びこのコンピュータにログインすると、メモリの中にアンパン2のデータの残骸が見つかったので、それをクライアントであるユーザに送信したのです。その後のことはそのデータを解析したクライアントがやったことではないでしょうか。

Little Mustapha-----そうか。ということは、もしかしてコマリタを雇っているのって長官の孫娘さんじゃないの?

コマリタ-----それは大ハズレ!ですが詳しいことは教えられません。


 その時留守番電話機の着信音が鳴り出しました。着信音といっても毎回違う音が鳴ったりするのですが、今回は初代宇宙戦艦ヤマトのテーマ曲の最後の方、Little Mustaphaが美女のコーラスパートと呼んでいる部分のメロディでした。


犬サンタ-----あ、これはきっとご主人様なんだワン!

Little Mustapha-----やっぱりこういう感じなのか。それじゃあハンズフリーモードでピッ!

留守番電話機-----「あの、こちらのセンサーでは異常な反応が消えたようなんですが、大丈夫ですか?何があったんですか?」

Little Mustapha-----なんていうか、ボクらの精神力が向こうに勝ってたって感じかな。

犬サンタ-----それは嘘だワン。嘘ついたらプレゼントは没収だワン!

留守番電話機-----「それは解ってますから大丈夫ですよ」

ミドル・ムスタファ-----最初からバレちゃってますよ。

Little Mustapha-----そのようだな。でも長官の孫娘さんが何が起きたか解ってないなら、これはなかなかややこしい事だなあ。コマリタっていうAIがクライアントにアンパン2の残したデータを送ったらそのクライアントっていうのが何かしてくれたみたいだけど。

留守番電話機-----「そうなんですか。…また忙しくなりそうね」

Dr. ムスタファ-----なんだか浮かない感じだが。

留守番電話機-----「そのクライアントというのがどういう人なのかが解らない限り、今回の事件が解決したとは言えません。でも今はその家の異次元の扉も安定しているようです」

Little Mustapha-----安定ってどういうこと?

留守番電話機-----「その家にあった異次元の扉は4年前に壊れて以来、少しずつ自然に修復されていたのです。今回それを狙った犯人は、完全に修復が終わる前に扉を乗っ取ろうとしたのでしょう。実は別次元のLittle Mustaphaがその次元の扉と繋がっているもう一つの扉を使ったことで不完全なまま修復を終了してしまう危険があったのです。あなた達がその扉を使うか、あなた達に代わって別の誰かが使うことで完全に終了してしまうところでした」

Little Mustapha-----別次元のボクって、そんな人出てこなかったよ。

留守番電話機-----「実はすぐ近くに来ていたのですが。それはどうでもイイですね。まだ完全に修復されてなかったので、入り口と出口も完全に繋がっていないのです。それでもう一人のLittle Mustaphaは直接そこには現れなかったのです。私がもう一つの扉があるということに早く気付いていれば良かったのですけど。危ないところでした」

ミドル・ムスタファ-----やっと少しずつ理解してきましたけど。扉を開けちゃいけない理由が解るとギリギリまで耐えて良かったと思えますね。

ニヒル・ムスタファ-----あとちょっと遅かったらトイレに逃げ込んでたところだったけどな。

留守番電話機-----「あの、私はこのことを報告したりやることが沢山あるので、これで失礼しますね。犬サンタちゃん達も早く帰ってくるのよ」

犬サンタ-----この人達はこれからまだパーティーするはずだから、私達ももう少しここにいるんだワン。

留守番電話機-----「ダメよ。みんな疲れてるんだし」

Dr. ムスタファ-----そんな事ないだろう。どうせまた乾杯し直しなんだろ。

Little Mustapha-----そうなるよね。

留守番電話機-----「良いんですか?それじゃあ、良い子にしてるのよ」

Little Mustaphaと犬サンタと犬弟子サンタ-----ハーイ!

ミドル・ムスタファ-----あなたは返事しなくていいんですよ。

Little Mustapha-----なにが?…まあとにかく予告どおり乾杯のやり直しだな。

犬サンタ-----そうだワン。残りのジャーキーも全部出すんだワン!今回はサンタの酒に頼らなかったということで、ご主人様にも高評価の報告をしてあげるんだワン!

Little Mustapha-----ああ、そうか!

ニヒル・ムスタファ-----その手があったの忘れてたな。

Dr. ムスタファ-----座禅なんかよりもサンタの酒の方が効果がありそうだったな。

Little Mustapha-----でもおかげでサンタの酒が一ビンまるごとゆっくり飲めるんだし。ちょっと濃いめに割ってもいいんだし。それじゃあ、バケツに水を汲んでくるからね。


 助かった喜びで、これまで起きてきたことはすっかり忘れて飲み始めてしまうLittle Mustapha達。異次元の扉のことなど気にすることなくこのままクリスマスパーティーが続きそうです。

撤収作業

 今回のクリスマスの話は大体終わったのだが、クリスマスマーケットの会場はあれからどうなったのだろうか?

 爆弾人間達が去った後もなんとかクリスマス女子会は続けられたのだが、話題が「袋小路に入ろうとした女子アナは誰なのか?」ということになってしまい内屁端は大ピンチ。しかもスタッフが下手に気を利かせて、芸能プロダクションに電話をして確認してみるということになってしまったのだ。

 もうダメかと思った内屁端だったが、あの時電話に対応したAIのデータが何故か壊れていたために、バレることはなかったようだ。

 九死に一生を得たといった感じの内屁端であったが、完全に憔悴しきった様子で、今はクリスマスマーケットの会場の隅からテレビ局のスタッフが撤収作業をしているのを虚ろな目で眺めていたのである。


 人もまばらになったクリスマスマーケットの会場だったが、内屁端から少し離れたところで女子達の黄色い歓声が沸き上がっていた。

「ドゥワット…。すいません。通してください。すいません…」

歓声の中からそんな声も聞こえて来ていたが、内屁端の耳にはその騒音は届いていないようだった。

 にわかに出来上がった人だかりをかき分けて出てきたのは、なんとあのイケメンのサンタ君だった。サンタは活動停止中なので普段着という感じの服を着ている。それでも女子達はそれがサンタ君だと気付いていたようだ。

 なんとか群衆から抜け出したサンタ君は内屁端の方へ向かってきた。

 内屁端は「あら、いい男」とうわの空で思っていたが、それがどんどん自分に近づいてくる。

「内屁端さんですね。ボクはサンタをやっていたものなのですが、あなたの力を借りたいのです」

今の内屁端の精神状態では、何を言われているのか良く理解出来ないようで、彼女はボーッと目の前のサンタ君を眺めていた。

「内屁端さん。聞いてますか?あなたのウンサーが必要なんです!」

サンタ君はそういうと両手で内屁端の両手を握りしめた。

内屁端はその瞬間ハッとしてサンタ君を見ると、その澄んだ目に吸い込まれそうになってしまった。

「私が、必要…?」

「そうです。あなたのウンサーが」

これは人気女子アナの内屁端。土壇場で大逆転の大チャンス到来か?

「望むところだ!」

舞い上がった内屁端はなぜか裏の顔バージョンで返事をしてしまったので、サンタ君は少し心配になっていたのである。


 この続きは来年になってしまうのか、その前に続くのかは良く解らない。

 ということで今年のクリスマスには色々なことが起きたような、起きてないような。正直なところ私にもなんだか良く解らない事になっているのですが。

 とりあえずプレゼンとは貰えなかったという事だけは確実です。


 そして、たまに長い文章を書くと疲れるということで、やはり定期的に大特集しないといけないという毎年恒例の反省もしておきます。


 それでは、次回はまさかの年内更新があるのか?ということですが、どうなるか解らないので気長にお楽しみに。