Little Mustapha達が買い物に出かけている間のDr. ムスタファとマイクロ・ムスタファの会話も気にならないこともないが、特に重要なことは話されないはずなので、ここはひとまず夕方のニュース番組のクリスマス特番の時間が近づいてきているテレビ局の様子を見てみることにする。

　テレビ局と言えばまずは内屁端アナ。人気女子アナのウッチーの名を襲名して、これまで人気女子アナとしてやってきた内屁端だったが、最近では周囲のライバル達の活躍に彼女の存在が埋もれてしまっているような気がしていたのである。特に夕方のニュース番組のメンバーである後輩の腹屁端や、天気キャスターのアイドル崩れの宇絵座理保、そして恐らく今日もゲストとして登場する宿敵の亜毛屁端の三人は最近特に人気が上昇しているのである。

　それで袋小路5000に入って起死回生を狙った内屁端であったが、袋小路5000が路線変更で袋小路Ⅴとなったために計画は失敗。ひとまずはいつもの人気女子アナのまま好機を待つということになったようだ。

　それはともかく、内屁端アナが夕方のニュース番組・クリスマス特番のためにテレビ局にやって来ると、腹屁端アナと宇絵座理保の姿を見つけたのだった。

内屁端-----あら、腹パンにリホっち。どうしたの？二人して顔色があんまり良くないみたいだけど。

腹屁端-----あ、これはウッチー先輩。実はおかしな話があるようなのですが。

内屁端-----おかしな話？！

宇絵座-----ウッチーさん聞いてないですか？いつものクリスマスマーケットの会場なんですけど、今年はなんだか幽霊みたいな人がいるって話なんです。

内屁端-----えー？もしかしてそんな話を信じてるの？

腹屁端-----でも火のないところに煙は立たない、という言葉もありますし。少し気になるので昨日の空き時間にクリスマスマーケットの会場へ行ってみたのです。

内屁端-----でも幽霊なんかいなかったんでしょ？

腹屁端-----それはそうなのですが。どこか雰囲気がいつもと違わないでしょうか？という感じで。

内屁端-----それは先に変な話を聞いてるからそう見えただけでしょ。それにあなた達もテレビに出てるんだし、幽霊なんて全部ヤラセだってことは解ってるじゃない。

宇絵座-----幽霊じゃないとしても生放送中に変なことが起きたら良くないですし、気をつけるにこしたことはないですよ。

内屁端-----中継を完璧にやるのはいつものことでしょ。だから今日もいつもどおりやれば良いの。あ、そろそろ会場にいかないと。二人とも余計なことは考えないでしっかりやるのよ。

　生放送中に変なことは毎回起きているのだが、宇絵座の心配している変なこととは違うのだろう。

　とにかく、おかしな事を気にする二人だと思いながら内屁端はクリスマスマーケットの会場へ向かったのだが、考えようによっては良い話を聞いたかも知れないと、歩きながら不敵な笑みを隠しきれないようだった。そしてカバンからスマホを取り出すとADに電話をかけた。

「もしもし、ADか。もうクリスマスマーケットにいるんだろ？あの近くにドンなんとかって店があったよな。」

「ドン○のことっすか？」

「そう、それだ。あそこにパーティーグッズとか変装グッズとか売ってるよな。そこに行って血のりとサンタクロースの衣装を買ってこい」

「なんすかそれ？」

「急遽決まったんだよ。なんでも良いからすぐに行ってこい」

「はい、解りました」

ADに命令する内屁端アナは裏の顔丸出し。一体何を企んでいるのか。

いつものクリスマスパーティー開始

　Little Mustapha達が近所のスーパーで5000円分のご馳走を買って戻ってきました。実際のところ、一人1000円分ですし、ご馳走と呼べるようなものはありません。それにクリスマスイブの夕方とあって、パーティーっぽい感じのお惣菜はすでに売り切れていて、それだったら食べ物より飲み物という感じのLittle Mustapha達ですので追加の酒なども買ってきたようです。

Little Mustapha-----やっぱり5000円分となると重たいよね。

ニヒル・ムスタファ-----それって、ほとんどが酒のビンの重さじゃないのか？

Little Mustapha-----まあ、そうだけどね。

Dr. ムスタファ-----なんだ、酒ばっかり買ってきたのか？

ニヒル・ムスタファ-----いやいや。ちゃんと先生のために鶏の竜田揚げも買ってあるぜ。

Dr. ムスタファ-----ええ？！竜田揚げなのか…。

Little Mustapha-----唐揚げとフライドチキンがオッケーで竜田揚げはダメなの？

ニヒル・ムスタファ-----こんなのほとんど唐揚げだぜ。

ミドル・ムスタファ-----まあ、どっちにしろそれしか売ってなかったんで、我慢しましょうよ。唐揚げだと思えば味も唐揚げと思えますよ。

Little Mustapha-----というか、唐揚げと竜田揚げってそれほど味が違うかな？

ニヒル・ムスタファ-----英語にしたら全部フライドチキンになりそうだけどな。

Dr. ムスタファ-----そうなのか。じゃあ竜田揚げでも大丈夫だな。

ニヒル・ムスタファ-----なんだ、結局食べるのかよ。

Dr. ムスタファ-----まあ、科学的にはな。

Little Mustapha-----どうでもイイから、早くご馳走を並べてパーティーを始めないと。コレまでもそうだったように、雰囲気は大事だからね。

ミドル・ムスタファ-----コレまでと同じだったらダメってことじゃなかったですか？

Little Mustapha-----だけど、今回は条件がちょっと違うんだし。最善は尽くさないとね。

マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっと良いですか！

Little Mustapha-----ドゥオッと…！そんなに強引に話に入ってくるマイクロ・ムスタファとか、どういうことだ？

マイクロ・ムスタファ-----いや。本当は皆さんが帰ってきたらすぐに話さないといけないことだったのですが。竜田揚げの話なんかが始まってしまって。それよりも、皆さんがいない間にあることが起きたんです。

Dr. ムスタファ-----ああ、そうだったな。キミ達が竜田揚げなんか買ってくるから忘れるところだった。

ミドル・ムスタファ-----竜田揚げで忘れるぐらいのことがそんなに重要なんですか？

マイクロ・ムスタファ-----Dr. ムスタファにとってはそうなのかも知れませんが、私はそうは思いませんよ。

Little Mustapha-----それで何があったの？

マイクロ・ムスタファ-----皆さんが買い物に出かけた後に電話がかかってきたんです。そのまま放っておけば留守番電話になると思っていたんですが、今日のこの場所で留守番電話の機能を使うのは少し心配だったのです。

Little Mustapha-----確かに、クリスマスイブに留守番電話は少し不吉だから、なるべく動いて欲しくないよね。

マイクロ・ムスタファ-----それでDr. ムスタファにも確認してから電話に出てみたのですが。電話をかけてきたのは去年ここに来ていた里梅屋（リバイヤ）さんでした。

Little Mustapha-----ああ、なんだ。あの人、パーティーが苦手とか言って、本当は参加したかったんじゃないかな。

マイクロ・ムスタファ-----いや、そうではなさそうなんです。里梅屋さんが言うには、やはりこの部屋は呪われているってことでした。

ミドル・ムスタファ-----そういえば、去年もそんなこと言ってたみたいですけど。あれは何だったんでしょうね。

ニヒル・ムスタファ-----プレゼントが貰えないってことが何かの呪いって考えたら合ってるかも知れないけどな。

Little Mustapha-----それは部屋よりもボクらが呪われてるって感じだし。それ以外では、去年も何も起きなかったんだし。

マイクロ・ムスタファ-----里梅屋さんが言うには、また夢に例の深淵の暗殺者が現れて何かを伝えてきたそうです。でも今回はなかなか言葉が理解出来ずに、言っている内容は推測するしかなかったということですけど。総合的に考えてみるとやはりこの部屋のことだということです。

Little Mustapha-----とはいっても、里梅屋さんってエッチな夢を見るのが得意なオカルト研究家だからなあ。それにああいう人はワケが解らない事を全部呪いとか祟りとかで説明しようとするからね。

Dr. ムスタファ-----確かに科学的ではないな。

Little Mustapha-----ボクなんかは科学的に座禅を組んで色んな呪いを解いてきたけど。まあ、それは後でいいか。とにかくここに住んでいるボクが呪われてないって言ってるんだし。なによりもその留守番電話機がちゃんとした電話として機能したということが良い予兆なんだし。呪われていると言われても対策のしようがないから、まずは豪華料理で乾杯といきましょう。

ニヒル・ムスタファ-----それもそうだな。

Little Mustapha-----それじゃあ、みんなコップに酒を汲んで。せーの…！

一同-----メリークリスマース！

　決してすんなり始まることのないパーティーがまた始まりました。里梅屋さんの言う呪いとは一体何なのでしょうか？そして、彼らのプレゼントはどうなるのでしょうか。

　そういえば、大量のリクエストの手紙を集めたサンタのLittle Mustaphaはあれからどうしているのでしょうか？