犬サンタ君が通話を終えると、なんとなく誰も喋らない時間というのが訪れました。みんながこれからどうしようか?と考えつつも解決策のようなものは少しも思い付かない。そんな状況が生み出した静寂。すると、その時どこからともなく声が聞こえてきました。この部屋では色んなところから謎の声が聞こえてくる気がします。
「知ってるカモ知れませんが、夜も更けてきまシタ。明かりを消しマス!」
その声のあとに部屋の明かりが消えました。
声が聞こえた瞬間に一同ビクッとなりましたが、例によってお互いに気付かないフリをして声を聞いていました。犬サンタ君とモモルダア捜査官は少し慌てたような感じでしたが、Little Mustaphaと主要メンバーはそれほど驚いてはいませんでした。
ミドル・ムスタファ-----ああ、これって去年もありましたけど。
Little Mustapha-----去年のあの部屋のは偽物だったけどね。これは本物のパコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroさ!
ニヒル・ムスタファ-----そんな威張ることはないと思うけどな。でもこれまで静かだったのに、喋り始めたな。
Little Mustapha-----これはボクのことを認識して、ボクがいる時だけ喋るようになってるんだよ。
Dr. ムスタファ-----なんだそれは?まるでAIだな。
Little Mustapha-----そうでしょ。
ニヒル・ムスタファ-----そんなワケはないと思うぜ。本物の方にはカメラもマイクもないって言ってなかったか?
Little Mustapha-----良く覚えてるね。実はボクのスマホから定期的に通信をして、それでここにいるかどうかの判断をしてるんだよね。だからこの部屋のWi-Fiが届かないところにいる時には外出中という設定になるんだよ。あとは部屋にいるのにウッカリスマホのWi-Fiをオフにしている時も外出中になるはず。ただしホントに外出している時には喋っているかどうかの確認ができないから、この機能にはあんまり自信はなかったけど。
ミドル・ムスタファ-----これまでは喋ってなかったですから、上手くいってるんじゃないですかね。
Little Mustapha-----それは良かった。
Dr. ムスタファ-----良く解らんが、部屋が暗くて何も見えないぞ。
Little Mustapha-----だったら、その辺に足で踏むスイッチがあるから。
ミドル・ムスタファ-----これですかね。なんか去年の偽の部屋とはちょっと雰囲気が違いますけど。あ、点いた。
Little Mustapha-----電球色で夜っぽい感じになったけど、クリスマスパーティーじゃないとなんか寂しい感じもするなあ。
マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっとイイでしょうか?
Dr. ムスタファ-----なんだ?テレビではまだ何も起きてないぞ。
マイクロ・ムスタファ-----そうではなくて、その留守番電話機のところの…。
一同(マイクロ・ムスタファ除く)-----アーッ!着信もないのに留守番電話のメッセージが残されていることを示すランプが点滅している(んだワン)!
Little Mustapha-----というか、モモルダアさんまで一緒に驚いてませんでしたか?
モモルダア-----なんだかつられてしまいました。
ミドル・ムスタファ-----それよりも、電気が消えたらこの展開ですか。
Little Mustapha-----まあ、これはもう大丈夫って解ってるからね。メッセージを聞いても大丈夫でしょ。
Dr. ムスタファ-----いや、そうでもないと思うんだが…。
Little Mustapha-----良いから良いから。ピッ!
ニヒル・ムスタファ-----まあ、さっきのことを話したところでどうせ聞くことになるんだしな。
留守番電話機-----ギュギョ…ギョギュ…、ギュゴギュゴゴ…。ヒュッフェホ、フェッシュェーシュ。ピー!「ちょいと、どういう事なんですの?またあたくしに黙ってクリスマスパーティーを開催してるって…。というのはクリスマスジョーク。今年はクリスマス中止ですって?メインイベントといっても過言ではないクリスマスパーティーを中止するなんて。それってそろそろ主役を私に譲るってことなんじゃないかしら?いずれにしても、あたくしに中止の連絡をしないというのは良くないですわ。ですから、あたくしに謝罪する気があるのなら、そして、あたくしと主役交代についての打ち合わせをしたいのなら、あたくしのお屋敷に電話してくださいな。電話番号は666の…」ピーッ!ムッフェィジュ、フウィィ!
ミドル・ムスタファ-----なんか久々にPrincess Black-holeのメッセージでしたね。
Little Mustapha-----そうだけど、まだメッセージがあるみたい。
留守番電話機-----ギュルギュル…ギュル…!「(ジジ…、ゴゴゴ…)フッフッフッ…!みんな、集まっているかね?(ジジジ…、ゴゴゴ…。)」ギュッギューギュ、シュウィィ!
犬サンタ-----ま、またなんだワン…!
Little Mustapha-----またって。これはボクのイタズラだよ。そんなに恐がらなくても良いのに。でも自分の声って、こうやって聞くと変な感じなんだよね。
ニヒル・ムスタファ-----エッ?!じゃあ、さっきのもLittle Mustaphaだったのか?
Little Mustapha-----さっきの?
ミドル・ムスタファ-----そのメッセージ二回目なんですよ。さっきのはもっと音が聞き取りづらかったですけど。
Little Mustapha-----そうなのか。さっきボクが軟禁されてたのは時空の狭間の僻地って言ってたし、そういうのが原因じゃないの。時間が普通の場所とは違うってことだし。どっちにしろあの悪魔のようなヤツはもういないから大丈夫!
モモルダア-----何の話か解りませんけど、そんなことよりもそろそろ危険だと思うんです。サンタを誘拐した後ろ前のLittle Mustaphaですけど、彼もクリスマスのシステムについては知っているはずです。だから日付が変わってクリスマスになるとプレゼントを持ったサンタがやって来ると思っているでしょう。
Little Mustapha-----そうか。電気が消えたと言うことはもうすぐ12時になってしまうな。
モモルダア-----しかし、転送装置が信頼できない状態では迂闊に動くことも出来ない。これは面倒なことですよ。
Little Mustapha-----というか、また去年のクリスマスに余計なことした、とかそんなことを言い出しそうな感じなんだけど。でも去年のアレはもっと評価されても良いって言うかさ、ボクが英雄扱いでも良いんじゃないか?って気もするんだよね。確かに混乱が起きてるみたいだけど、アレがなければ世界はもっと酷いことになってたんだし。
モモルダア-----まあ、そうなんですが。もっと良いのは自らの命を犠牲にして世界を救った方がね。でもこれは仮定の話ですから、気にしないで。
Dr. ムスタファ-----モモルダアさん、あんたは獰猛じゃない代わりに、なんか冷酷な感じがするな。
モモルダア-----そうでしょうかね。
ミドル・ムスタファ-----まあ、ここで言い争っても意味が無いですから。これからどうするか考えましょうよ。