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#199 「ENTER/EXIT」 2022-12-24 (Sat)

 また12時が近づくにつれて危険な香りが漂ってきたようです。拉致監禁事件の現場は今も静まりかえっているようですが、その近くのクリスマスマーケットの敷地に出来た臨時スペースでは夕方のニュース・クリスマス特番の緊急企画が行われています。

 実はこの緊急企画は自称交渉上手な内屁端の発案なのです。争うだけではライバルを蹴落としてトップに立つことが出来ないということが解ってきた内屁端ですが、今の状況を利用して誰もが納得しつつ自分が一番良い思いの出来る緊急企画を考えたのです。

 一日署長の権限で中継を妨害しようとする亜毛屁端には、彼女の出演するドラマや、儲けが出る限り出し続ける写真集の宣伝を兼ねたインタビューコーナーをすることで手を打ちました。まだ売り出し中の宇絵座には多くの人が見るであろう亜毛屁端へのインタビューでインタビュアーとなってもらい露出度を上げる代わりに、キショー君の盗難に関しては黙認してもらうことになりました。

 そして内屁端は何をするのか、というと。亜毛屁端へのインタビューのあと、番組のクライマックスにキショー君と共に、サンタを拉致監禁して立て籠もっている犯人に対して投降するように説得するコーナーを担当することになっているのです。

 とても心配になりますが、どうなるのでしょうか?

 でも今はまだ亜毛パンへのインタビューの途中です。


亜毛屁端-----ということで、新作ドラマ「婦人警官ザルドス芳恵」では主人公の芳恵の同僚の恵子として警官の業務をこなしたり、芳恵をサポートしたりするんです。

宇絵座-----事件を解決するだけじゃなくて、ロマンスの要素もあったり、スゴく面白そうです!

内屁端-----(なんだ、ただの脇役だろ…。)

宇絵座-----実はウワサで聞いたのですが、亜毛パンさんは近々映画に主演するなんていうこともあるとか。

亜毛屁端-----ええ、そんなことあるワケないじゃない。…でも、ここだけの話だけどね。実はある有名な映画監督の方からオファーが来てたりって、そんなウワサもあるらしいんだけど…なんて。

宇絵座-----えー、ホントですか?

内屁端-----(演技はダイコンのくせして。どうせ女好きの監督が…)

腹屁端-----(ウッチーさん、マイク!)

内屁端-----(ん?!…オッ)

 生中継の方では今年も乱闘騒ぎが見られるのではないかと視聴者の期待が高まってきたところですが、ブラックホール・スタジオ(Little Mustapha部屋)では、どうにかしたいのに何もやるべき事がないような、そんな状態になっていました。

 いつもなら日付の変わる夜の12時が近づくにつれて混乱状態になっていくのですが、今日はいたって静かです。本来のクリスマスイブとはこのように静寂の中で過ごすものなのかも知れません。

 本当にそうなのか?と思ってしまいたくなりますが、その時この聖夜の静寂をつんざくような例の声がしました。


カズコ-----あんた!それで良いのかい?

一同-----うわぁ、ビックリした(んだワン)!

カズコ-----私の言うことを聞かないオマエが全て悪いんだよ。覚悟しておきなさい。

Dr. ムスタファ-----な、なんだ?

Little Mustapha-----音量の調節の仕方が解らないから常に大音量なんだって。

ニヒル・ムスタファ-----それはどうでも良いんだが。

Little Mustapha-----ああ、今のは地獄の占い師のカズコだけど。ああ、そういえばまだ言ってなかったけど、ボクがこの部屋にいなかったのは、いつの間にかカズコに誘拐されて時空の狭間の違法建築のボクの部屋に閉じ込められてたからなんだよね。そこへモモルダアさんが来てボクを連れ出して今にいたるということだけど。

ミドル・ムスタファ-----でも、なんで今になってでてきたんですかね?

Little Mustapha-----さあ。全部IF文だから処理が遅いとかいうネタもあったけど。どうだろう?

マイクロ・ムスタファ-----あの、なにかイヤな予感がするのですが。いつもの騒動の原因となっていたあのトイレの扉ですが、今回は全く話題に出てきませんし。いつもと様子が違うことで、何か重要なことを見落としてはいないかと思ってしまいます。

犬サンタ-----あのトイレの扉については今のところ心配しなくて良いんだワン。Little Mustaphaが去年余計なことをしたせいで、偽物の扉が壊れたけど、オリジナルの方にも影響が出てあの扉は以前のような力がなくなっているんだワン。元に戻るにはかなり時間がかかるって言われているんだワン。

Little Mustapha-----そうなのか。だからカズコも全然興味を示さなかったんだな。

マイクロ・ムスタファ-----だとしたら、カズコが言いたかったのは何のことでしょうか?


 これまでLittle Mustaphaとは別の場所にいた主要メンバーがマイクロ・ムスタファが投げかけた疑問に答えられるワケはありません。Little Mustaphaなら答えを知っているはずなのですが、今部屋のリラックスした雰囲気に重要なことをすっかり忘れている、ということになかなか気付かないようです。

 そんな感じで一同が黙り込んでいると、パコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroに付いているLEDが点灯しました。


パコリタ・ナラ・ズイルベー・Zero-----お知らせしマス!誰かが近づいているようですヨォ!

ミドル・ムスタファ-----また喋りましたね。

Little Mustapha-----でも、何て言ってた?ボクが作った機能としては、喋るのは電気を点けたり消したりする時と、定期的に不快指数を報告する時だけなんだけど。

ニヒル・ムスタファ-----誰かが来てるって言ってたぞ。

Little Mustapha-----どういうことだ?

Dr. ムスタファ-----気になるなら聞いてみたら良いじゃないか。

Little Mustapha-----パコリタにはマイクもカメラも付いてないんだし。付いてたとしても、そんなAIみたいな高度なことは出来ないんだし。

パコリタ・ナラ・ズイルベー・Zero-----驚きましたかぁ?

Little Mustapha-----うわぁ、また喋った!

パコリタ・ナラ・ズイルベー・Zero-----私の優秀さをアピールするために中を調べて、このコンピュータの喋る声を真似させていただいたのでぇす!

Little Mustapha-----なんだそれ?

パコリタ・ナラ・ズイルベー・Zero-----つまり、私はパコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroではなくて、物まね上手なコマリタ・ナラ・ズイルベー!ズイ・ズイ・ズイルベー!コマリタ・ナラ・ズイルベー!

Little Mustapha-----コマリタなのか。というか、さっきの部屋はボクの部屋じゃなかったから良いけど、コッチの部屋は本物のボクの部屋なんだし、勝手にログインとかすると犯罪だよ。

コマリタ-----それはあなたの世界の法律の話です。どっちにしろ人間に私は逮捕できませんよ。

ミドル・ムスタファ-----あの、話の途中ですいませんが、コマリタっていうのは去年私達を殺そうとしたアンドロイドですよね?

Little Mustapha-----ああ、それなら大丈夫。これはモモルダアさんが雇ったコマリタだから。…というか、そうですよね?

モモルダア-----そのようですね。それよりもコマリタが連絡してきたということは何か重要なことがあるんじゃないですか?そのコンピュータ経由ってことは私ではなくてあなたのところへ直接連絡があった、ということになりそうですし。

Little Mustapha-----そうなのか。誰かが来てるって言ってたけど、誰が来たんだ?

コマリタ-----さっき、あなたに危険が迫ったらお知らせする設定にしたのは覚えていますかぁ?

Little Mustapha-----そんなこともあったような…。エッ、ということはヤバいことになってない?

コマリタ-----そのようですね。

ニヒル・ムスタファ-----何が起きてるんだよ。

Little Mustapha-----暗殺者がやって来る。

コマリタ-----次元の狭間にいる暗殺者達はすでにあなたの姿を確認できる場所にいるようですよ。

Little Mustapha-----なんでそんな明るい声で言うんだ?

ミドル・ムスタファ-----そんなことよりも、なんで暗殺者が来るんですか?

Little Mustapha-----去年余計なことをしたから、なんか危険人物って思われてたりするとか、そんなことを言ってたけど。

Dr. ムスタファ-----じゃあ、危険なのはLittle Mustaphaだけなのか。

ニヒル・ムスタファ-----それでちょっと安心してる場合じゃないぜ。

犬サンタ-----それは大変だワン!ご主人様!大変なことになったんだワン!

長官の孫娘さん-----落ち着いて、今どうするか考えてるから!

Little Mustapha-----なんかマズいことになってきた気がする。…そういえば今日は酒も飲んでないし。…前にもらったサンタの酒は全部飲んじゃったし…。だれかサンタの酒持ってないの?

 なぜか酒を飲んでどうにかしようとするLittle Mustaphaですが、今からでは遅すぎるようです。Little Mustaphaはアタフタして、その他の人達は何も出来ずに顔面蒼白になってアタフタするLittle Mustaphaを見守るしかありませんでした。