Little Mustaphaは周りがかなり暗くなったのに気付いて転送が行われたのだと解りました。これでひとまずは安心に違いないので、アタフタするのはやめてこれからどうするのか考えようと思ったのですが、顔を上げると目の前にサンタ君の姿がありました。
縄で縛られた状態で椅子に座らされているサンタ君は驚いてLittle Mustaphaの方を見ていました。
ということは、ここは…と思った時に、Little Mustaphaの背後で怒鳴り声がしました。もちろんそれは後ろ前Little Mustaphaです。Little Mustaphaは飛び上がるように振り返ると、そのまま尻餅をつきました。
後ろ前Little Mustapha-----誰だオマエは!
Little Mustapha-----ま、待って…。話せば解るから…。
後ろ前Little Mustapha-----誰だと言っているんだ。まさかサンタか?
Little Mustapha-----ボクは、キミだ。Little Mustaphaだ。サンタはこんな服じゃないよ。
後ろ前Little Mustapha-----何だと?ふざけてるのか?
サンタ君-----本当ですよ。その人はLittle Mustaphaです。あなたが盗んだ不在票は彼のものです。
後ろ前Little Mustapha-----なるほど。ホントに別次元に同じ人間がいるなんてことがあるんだな。どおりで攻撃する気にならなかったワケだ。
Little Mustapha-----そ、それは良かった。というか、キミ達は目に入ったものはなんでもかんでも攻撃するワケでもないみたいだね。じゃあ、話し合いでなんとかする方法もあるんだよね。
後ろ前Little Mustapha-----その前に、なんでオマエがここにいるんだ。
Little Mustapha-----それは色々とあってね。今年はなんと暗殺されそうなんです!本当ならもっと安全なところに隠れていられるはずだったのに。というか、良く考えたらキミがこんなことをしたからいけないんじゃないか?だいたい、キミはなんでサンタ君を誘拐したりしたんだよ。
後ろ前Little Mustapha-----ちゃんと誰もが納得する理由はあるよ。今年はクリスマスにプレゼントが貰えないことが解ったからだ。
Little Mustapha-----今年は?…ってどういうこと?去年までは貰えてたの?
後ろ前Little Mustapha-----当たり前だ。我々の次元にはサンタはやって来ない。それは大昔に我々の次元の人がチョットした理由でサンタを噛み殺したのが原因なんだが。それ以来サンタが来なくなったから、我々の次元ではサンタなんて存在しないということにして、プレゼントは親から貰うのが決まりになっていたのだ。オレも去年までずっと親にプレゼントをリクエストして、それで目的のプレゼントを貰っていたのだ。それが今年になって突然プレゼントはナシって言われたんだ!そんなことをされたらこうして犯罪を犯してでも、本物のサンタからプレゼントを貰おうとするのもおかしくはないだろ。
Little Mustapha-----相当怒っているようだけど、それはなんかおかしい気がするよ。その前にキミは多分ボクと同じ年ってことだよね。それで、去年までは普通に親からプレゼントを貰っていたんでしょ。
後ろ前Little Mustapha-----そうだ。おれは怒りにまかせて両親を殺そうとしたんだが、反撃されたからそのまま家を飛び出してきたのさ。そこである人からサンタのことを聞いたんだ。その人の言うとおりにすればサンタからプレゼントを貰えるって。
Little Mustapha-----なんてことだ。去年まで望んだプレゼントが毎年手に入っていたのに、たった一回プレゼントが貰えないだけでサンタを誘拐するなんて。
後ろ前Little Mustapha-----そうだ。オマエも同じLittle Mustaphaなら解るだろう。
Little Mustapha-----なにを言ってるんだ!ボクらは子供頃にリクエストどおりのプレゼントが貰えなくて、それ以来一度もプレゼントを貰ってないんだぞ!
後ろ前Little Mustapha-----な、なんだって…!?
Little Mustapha-----しかも最近はずっと命の危険にもさらされながら、なんとかしてプレゼントを貰おうと頑張っていたのに。それでもまだ貰えないんだ!
後ろ前Little Mustapha-----そんなむごいことがあるなんて…。それに引き替え、オレは…。たった一度プレゼントが貰えないというだけで、こんなことをしてしまったのか…。