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#199 「ENTER/EXIT」 2022-12-24 (Sat)

 ブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)にやって来た犬サンタ君によるとLittle Mustaphaは誘拐されたということです。主要メンバーのいないブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)にいるLittle Mustaphaはそんなことには気付いていない様子ですが、そろそろ耳をつんざくような恐ろしい声で喋るカズコに対して、もう少し静かに喋れないのか?と思ってきたところでした。


Little Mustapha-----それじゃあ、今のこの場所はボクの部屋じゃないっていうこと?

カズコ-----そうよ。完全に複製したから気付かないのも無理はないけどね。

Little Mustapha-----それって、なんか前にも似たような事があった気がするんだけど。もしかして、この偽のボクの部屋のトイレの扉を次元の扉に作りかえようとか、そんな計画?

カズコ-----そんなことはしないわよ。私もあの扉は手に入れたいと思ってたけどね。今はアンタの命を守る方が大事だからね。

Little Mustapha-----命?

カズコ-----そうよ。アンタ、去年のクリスマスに余計なことしたでしょ。ほとんどの人間にはそんなこと気にならない事だけど、こっちでは大混乱なのよ。

Little Mustapha-----コッチって、どっち?

カズコ-----それはどうでもイイのよ。それで、いくつかの勢力はアンタのことを危険人物ってことにして、消そうとしているのよ。だけど、私はアンタに生きててもらわないと都合が悪いからね。

Little Mustapha-----もしかして、ボクが生きてることによって恐ろしいことが起きるとか?だとすると、ボクが犯罪者になるっていうのは間違ってないのか?…ああ、なんてことだ。これまで真面目に生きてきたつもりだったけど、そんなこととは関係なく犯罪者になってしまうし、命まで狙われてしまうし。

カズコ-----何言ってるのよ。アンタに出来るのは万引きぐらいでしょ。犯罪者なんてことは知らないわよ。

Little Mustapha-----あれ?!そうなの?でもサンタの運営事務局からは、そのうちボクが犯罪者になるからプレゼントは渡せないって言われたんだけど。

カズコ-----さあ、それは何か別の話じゃないかね。アンタに犯罪者の素質はないよ。とにかく、ここにいる限りは命は守られるからね。おとなしくしてるんだよ。それじゃ、私は忙しいから行くわよ。

Little Mustapha-----ああ、どうも…。


 行くといっても、これまでも声しか聞こえなかったカズコなのですが、静かになったのでどこかへ行ったということでしょう。

 Little Mustaphaはまだ何が起きているのか理解できていないのですが、このどこにあるのか解らない偽物の自分の部屋の中にいることが不安に思えてきました。それで窓を開けて外を確認したのですが、そこには真っ黒い空虚が永遠に続いているようで、Little Mustaphaは窓を開けたことを後悔しました。

 ここがどこだか解りませんが、世界からは完全に隔離された場所のような気がします。こうなるとここにいるしかありません。Little Mustaphaは部屋の中を調べ始めました。カズコの言うとおり、この部屋がブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)の完全な複製だとしたら、ここにあるもので暇つぶしは出来るはずです。

 一体いつまでここにいれば良いのかは解りませんが、いつものパターンなら日付が変わってクリスマスになった時に安全ならそこで全て解決だとLittle Mustaphaは勝手に考えていました。

 部屋の中のものを一通り調べるとパソコンなどはちゃんと使えることが解りました。でも窓の外に広がる空虚の事を考えるとインターネットなどは無理だとも思いました。そこでLittle Mustaphaは作りかけになっていたパコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroの新機能の続きを作ることにしました。この話の最初の方にも出てきましたが、パコリタ・ナラ・ズイルベー・ZeroとはRaspberry Pi Zeroという小型のコンピュータでLittle Mustaphaが作ろうとしているデジタル・アシスタントの名前です。


 Little Mustaphaはいつものようにいつものパソコンからパコリタ・ナラ・ズイルベー・Zeroにログインしました。そして、新機能のためのファイルを開こうとしたのですが、その前に見たことのないファイルが沢山あることに気がつきました。

 Little Mustaphaが「なんだろう?」と思ったその時です。カズコとは違う誰かの声が聞こえてきて、Little Mustaphaは驚いて今回もビクッとなりました。

「はい、こちら現場のコマリタ・ナラ・ズイルベーです!ズイ、ズイ、ズイルベー!ゴ・マ・ミ・ソ・ズイルベー!」


Little Mustapha-----その声は、地獄の女子アナ風アンドロイドのコマリタ・ナラ・ズイルベー!…というか、去年のクリスマスに壊れたと思ったけど。

コマリタ-----ご安心ください!去年壊れたというのがどのコマリタ・ナラ・ズイルベーかは解りませんが、それは量産された私達のうちの一つ。私達は何体でも複製可能なのです。さらに言うと私達の頭脳である人工知能プログラムは無限に複製できるのです!それでは質問です!私がここへ何をしに来たのか解りますかぁ?

Little Mustapha-----エェッ?!…ってことは、まさかボクの命を狙っているっていうのはコマリタなの?

コマリタ-----それは大ハズレ!暗殺をするにしても、そこにいくことは不可能なので、今回はこうして音声だけで登場という事になっているのです!厳密にいうと、その小さなコンピュータに勝手にログインして、スピーカーを使わせてもらっていまぁす。さらに、私は去年壊れたというコマリタとは違うユーザーに雇われているのです。基本的に我々コマリタ・システムは雇い主であるユーザーの指示に忠実に従います。よって私は私のユーザーの指示どおりにあなたをサポートするのです。

Little Mustapha-----そうなのか。でも去年のコマリタも最初は仲間のフリをしていた感じもあるからなあ。まあ、声だけなら大丈夫かな。

コマリタ-----それでは楽しいクリスマスを!

 ヘンな感じですが、文字数が増えてきたのでコマリタとの会話はここでいったん終了のようです。