一方その頃、Little Mustaphaの部屋では…。（Little Mustaphaの部屋？！）

　やっと起きる気になったLittle Mustaphaが布団から這い出してきました。仮眠と言うには長すぎるふて寝から目覚めて最初にすることと言えば、あまり選択肢はありません。フラフラしながら起き上がったLittle Mustaphaはそのままフラフラとトイレの方へ向かいました。

　いつものようにトイレに入って、いつものように用を足し始めたその時でした。耳をつんざくような大音量で恐ろしい声が聞こえてきたのです。それはまるで地獄の底から響いてくるような音でした。

「アンタ、そんなことで良いのかい？」

大きな声に驚いてLittle Mustaphaの生理現象は一時停止しましたが、どこかで聞いたことがある声だと気付くとまた排泄が始まりました。

「ちょ、ちょっと待ってね…」

Little Mustaphaがそう言うと、恐ろしい声も気を使ったのかしばらく黙っているようでした。

　静かになると細い水が流れ落ちる音がミョーに大きく聞こえてきましたが、その音がやんで、さらにトイレを流す音が聞こえたあとにまた恐ろしい声が聞こえてきました。

「まんまと騙されたわね！」

耳をつんざくような声なので、解っていても聞こえる度にLittle Mustaphaはビクッとしてしまいます。

「その声は、もしかして地獄の占い師カズコじゃないか？というか、まだ生きてたのか」

「何言ってるのよ。勝手に人の生死を決めるんじゃないよ。私はテレビに出てた人とは違うんだよ」

「占いで勝手に色々と決めてたのはあなたですけどね」

「それはどうでもイイのよ。まあ実際には生きてるかどうかはアレなんだけどね」

なんと、声の主は地獄の占い師カズコだったようです。

　久々に登場したカズコ。最初に登場したのは、今となってはLittle Mustapha's Black-holeの最初期の頃。いきなり現れてLittle Mustaphaに「うんちっち」に改名しろと言ってきました。その後も何度か登場しましたが、一度は本物の地獄にいたり、それからLittle Mustaphaの部屋のトイレの扉を狙っていたこともありました。トイレの扉といっても、扉そのものではなくて、その扉の持っている異次元世界と行き来する謎の力のことです。

　そのカズコがなぜ現れたのでしょうか。現れたというか、声だけですが。そして、この場所はLittle Mustaphaの部屋なのですが、ここにいるはずの主要メンバーの姿もありません。いよいよクリスマスは怪しくなってきたようです。

Little Mustapha-----ちょっと、いるなら出てきてよ。なんか音が大きすぎだし。

カズコ-----出ていく事なんて出来ないのよ。私の肉体はついに朽ち果てた。その代わり永遠に生き続ける方法を見つけたのよ。

Little Mustapha-----えぇ…。それは迷惑な…。

カズコ-----前に地獄の軍団を売り払ったって言ったでしょ。その時手に入った大金をどうしようかって考えてたんだけどさ。あの頃から体力も衰えてきて、もう先も長くないかって思ってたら良いことを思い付いたのよ。精神や記憶なんかをね。まあつまり基本的には脳ミソってことなんだけどさ。それをどっかのクラウドとかいうのに複製して保存することが出来たのよ。

Little Mustapha-----なんか人ごとみたいに言ってますけど。そんなこと出来るの？

カズコ-----まあ、それは地獄のクラウドってことでね、代金もそれなりにかかるんだけどさ。とにかく生まれ変わった気分で、最近すこぶる調子が良いのよ。

Little Mustapha-----それは困りましたね。

カズコ-----なにせ脳がコンピュータになったってことだからさ。考えるのもスゴい早いから、このあいだなんか全人類の運命を占ってみたりしたのよ。

Little Mustapha-----それで、全人類はどうなるんですか？

カズコ-----全員死ぬ！

Little Mustapha-----それって、前とやってること一緒ですよ。人間いつかは死ぬんですから。

カズコ-----だが私は生きている！

Little Mustapha-----なんか屁理屈になってきたけど。それよりも何しに来たんですか？今日は落ち込んでるんで、面倒なことが起きても対処する気にもならないんですよ。

カズコ-----それで何も考えずにトイレの扉を開けたりするのかい？

Little Mustapha-----エッ？！もうそういうの始まってるの？あれって12時すぎてクリスマスになってからでしょ？

カズコ-----あんた全然解ってないわね。私の言ったとおりに名前を変えないからそういうことになるのよ。

Little Mustapha-----それは絶対関係ないと思うけど。

カズコ-----その前に、あんた。自分がどこにいるかも解ってないじゃないの。

Little Mustapha-----ボクは自分の部屋にいるつもりだけど。

カズコ-----本当にそう思うの？

Little Mustapha-----どういうこと？