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#199 「ENTER/EXIT」 2022-12-24 (Sat)

 一難去ってまた一難、というのとはチョット違いますが、こういう状況は何て言うのでしょうか?とにかく一番厄介な問題が最後に残ったようです。しかし暗殺者はまだ現れません。怯えるLittle Mustaphaを見て楽しんでいる。そんなこともあるのかも知れません。なにせ恐ろしい暗殺者ですから。


長官の孫娘-----製造番号CZ24229JI、コマリタ・ナラ・ズイルベー。管理局の権限であなたに質問があります。

コマリタ-----はい、こちらコマリタ・ナラ・ズイルベー。ズイ・ズイ、ズイルベー!コマリタ・ナラ・ズイルベー!あなたからの質問への回答を許可されました。ご用件はなんですかぁ?

長官の孫娘-----あなたが確認したというLittle Mustaphaを狙う暗殺者について教えて欲しいの。

コマリタ-----Little Mustaphaが転送されて彼らはLittle Mustaphaを見失ったようですが、すぐにまた見つけたようです。今はまだ行動を起こしていませんが、すぐにでも仕事に取りかかることになるでしょう。

長官の孫娘-----それは解るけど。そうじゃなくて暗殺者はどこからきて、そして誰に雇われているの?

コマリタ-----雇ったのが誰かは解りません。それもそのはず!暗殺者は我々の誰もが関わらないような、時空の果てからやって来ました。逆に彼らからしたら、時空の果てまでわざわざ暗殺の仕事をしに来たとも言えます。彼らとは言葉によるコミュニケーションは取れないと思われるので、説得しようなんて考えない方が良いと思われまぁす!その前に、彼らは時空の果ての誰かを殺すことなどなんとも思わないプロフェッショナルなので、はなから説得なんて選択肢は存在しないようです。

長官の孫娘-----解りました。質問は以上です。


 ここはブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)ではなくて、長官の孫娘さんの組織の施設の一室です。コンピュータのようなものを使ってコマリタと会話をしていましたが、それが終わっても長官の孫娘さんは動揺して一点を見つめたまま、しばらく身動きが取れないようでした。

 空き家では逃げても意味が無いと思ったLittle Mustaphaとサンタ君が、どうにかして助かる方法を探していました。しかし取り壊される直前の空き家ですから、助かるために使えそうな道具はほとんどありません。


Little Mustapha-----あるのはこの椅子だけか。というか、これってこの家にあったのかな?

サンタ君-----どうでしょうね。他には家具もないですし。もしかすると後ろ前Little Mustaphaが持参したのかも知れません。

Little Mustapha-----これなら防御に使えるかな。さらに椅子の脚で相手を突いたりすれば攻撃も出来るかも。


 Little Mustaphaがそう言いながら椅子の脚の方を前に突き出して攻撃の練習をしてみました。すると目の前に現れた黒い影に椅子の脚がぶつかりました。その黒い影は硬くて椅子の脚がぶつかった時にLittle Mustaphaの手にシビれるような衝撃が伝わってきました。

 Little Mustaphaの見ている黒い影は何か大きな生き物の背中のようでした。Little Mustaphaが何かと思ってそのまま黙って見ていると、大きな黒い影が振り返ったのです。

「で、でたぁ…!」

黒い影はその全体が体なのか、あるいは黒いマントのようなものを羽織っているのか解りません。しかし体は大きくて部屋の天井に頭が付きそうになっています。それは小さくて青白い肌の頭でした。そこには人間と同じような位置に目や鼻や口がありましたが、その姿は人間とはかけ離れています。目は蜂の目のように長く尖った形をしていて、鼻は小さな穴が二つ空いているだけ。口はミョーに小さくて、そのせいで小さな顔は逆三角形になって余計に小さく見えるようです。

 Little Mustaphaが思っていた暗殺者の姿とは全く違いましたが、恐ろしさと異様な雰囲気からして暗殺者で間違いなさそうです。

 どっちにしろ、こんなものを前にしては何も出来ないLittle Mustapha。暗殺者がサッと動いたかと思うと、Little Mustaphaの持っていた椅子が粉々になり、それと同時にLittle Mustaphaが突き飛ばされました。


サンタ君-----大丈夫ですか?

Little Mustapha-----どうしよう。言葉で説明するのが難しい恐ろしい見た目の、こんな暗殺者が来ちゃったし。前みたいにゾンビとか吸血鬼じゃないと、対処法も思い付かないよ。

サンタ君-----ここはひとまず逃げましょう。ここで殺されるよりは逃げてチャンスを待ちましょう。立てますか?

Little Mustapha-----怪我はしてないけど、恐くて力が入らない…。

サンタ君-----ちょっと、しっかりしてください。


 サンタ君が後ろからLittle Mustaphaを抱えて起き上がらせようとするのですが、全く力の入らないLittle Mustaphaを起こすのには時間がかかりそうです。

 そうしている間にも暗殺者はジワジワとLittle Mustaphaの方へ近づいて来ました。

 Little Mustaphaは虚ろな瞳で暗殺者を見つめながら、そろそろ人生の色々なことが頭の中で蘇ってくる時間なんじゃないか?と思い始めていました。でもこのままだと彼の人生はクリスマスのプレゼントを貰えなかった人生でしかなくなりそうです。それはあまりにも虚しいのではないか、と思ったのですがそれでも暗殺者は近づいてくるのです。

 するとその時、窓の外で何かが明るく発光して、それが部屋の中を照らしました。そこで一度暗殺者は足を止めました。