謎の空間にいるLittle Mustaphaは元の世界に近づいてきたようですが、どこからともなく声が聞こえてきてチョットした緊張感の漂っているブラックホール・スタジオ(Little Mustaphaの部屋)では。
犬サンタ-----あっ、これはご主人様の声だワン!どこにいるのかワン?
声-----こっち、こっち。通信機よ。
犬サンタ-----Little Mustaphaの組み立てた機械はどこにあるのかワン?
ミドル・ムスタファ-----機械?!ああ、悪魔デバイスとか言ってたヤツ。部屋の隅にありますけど。なんか画面に明かりが点いてますね。
犬サンタ-----やっぱりご主人様だワン!ちょっと、解りやすいようにその機械をこっちに持ってくるんだワン。
ニヒル・ムスタファ-----こんなものでどうやって会話が出来るんだろうな。
ミドル・ムスタファ-----正式名称は通信機なんですかね?
犬サンタ-----特に名前はないんだワン。Little Mustaphaは悪魔デバイスって言ってるけど、ご主人様は恥ずかしいから通信機って言ってるみたいだワン。
長官の孫娘さん(通信機)-----ちょっと、余計なことは言わなくてイイの。…あの、みなさん集まってくれてありがとうございます。
Dr. ムスタファ-----いやいや、礼にはおよばんよ。
ニヒル・ムスタファ-----先生はプレゼントのためなら呼ばれなくても来るだろ。
ミドル・ムスタファ-----そんなことよりも、長官の孫娘さんから連絡なんですから、ちゃんと聞きましょうよ。
Dr. ムスタファ-----まあ、そうだな。
長官の孫娘さん(通信機)-----実は私達の転送装置を使って拉致されているサンタを助けられるかも知れないのですが。その前に知りたいことがあって。そこに去年のクリスマスに書かれた不在票がないでしょうか?
ミドル・ムスタファ-----それってサンタの国で作られたやつですか?この間Little Mustaphaが見せてくれたやつですね。確か壁に飾ってあったんですが。ちょっと見当たりませんね。
マイクロ・ムスタファ-----あの、ちょっと待ってください。確か前回のリモートの開設記念日のパーティーの時には、Little Mustaphaはそこの机のパソコンを使っていたはずですよね。そして、壁に飾ってあった不在票を取るのに立ち上がって、コッチの壁の方に向かったと思いますが…。
ニヒル・ムスタファ-----なんか、そこの壁のところって、良く見るとボロボロになってるな。
マイクロ・ムスタファ-----多分、不在票を入れた額を掛けていたフックを無理矢理外した跡でしょう。
長官の孫娘さん(通信機)-----そうですか。だからサンタはあんな場所にいるんですね。
ミドル・ムスタファ-----どういうことですか?
長官の孫娘さん(通信機)-----サンタは前の年にプレゼントを渡せなかった場合、次の年には確実にプレゼントを渡すために不在票のある場所へ直接現れるのです。犯人はそのシステムを利用するために不在票を盗んだのでしょう。でもこちらは逆に不在票の位置を利用してサンタを助けることが出来るのです。こちらでサンタをその部屋に転送しますから、しばらくサンタをかくまっていて欲しいのです。
Dr. ムスタファ-----お安い御用で。
ニヒル・ムスタファ-----あんまり浮かれない方が良いぜ。プレゼントも一緒に転送されてくるとは限らないからな。
Dr. ムスタファ-----そうなのか?
長官の孫娘さん(通信機)-----それは解りませんが…。あの、お願いしますね。
犬サンタ-----私もいるから大丈夫だワン!
長官の孫娘さんとの通信はここで一度終了しました。この部屋では色々なことが起きて来ましたし、彼ら自身も何度か転送のようなことを経験しているので、サンタが転送されてくると聞いても驚いた様子はありませんでした。
なんとなくフワッとしたような、とかそんな雰囲気でサンタが目の前に現れると誰もが思っています。
ただ心配なのは、サンタ君が犯人に暴行されて怪我をしているとか、顔がアザだらけとかだったりした場合です。そういう状態だとクリスマスらしくなくてテンションが下がるに違いないのです。
果たしてサンタ君はどういう状態で転送されてくるのか?と一同固唾をのんで部屋の中でサンタ君が転送されてきそうな場所を見守っていました。
そして、部屋の空気に何かの変化を感じた次の瞬間に転送が行われました。しかし、そこに現れたのは誰も予想しなかった男の姿でした。
一同「あれ?!」と思ってそこに現れた男のことを見ていました。男の方も「あれ?!」と思っていたようですが、すぐに緊張した様子になって辺りを見回しました。そしてすぐに主要メンバーと犬サンタ君に気付いたようです。
「誰だオマエ達は!ここはどこだ!ウワァァアアア!」
男は猛烈な勢いでまくし立てると、歯を剥き出しにして部屋にいた人達を威嚇しました。口の中にはノコギリのような鋭い歯が並んでいました。
「大変だワン!これは後ろ前人だワン!」
「エッ、そんな…」
悪魔デバイスから長官の孫娘さんのうろたえた声が聞こえてきました。
主要メンバー達は何が起きているのか解らなかったのですが、危険な状態なのは明らかです。どうにかすべきなのですが、この怒り狂った人をなだめることも出来そうにありません。
「ここはどこだ、と聞いているんだ!」
男は一番近くにいたミドル・ムスタファに詰め寄りましたが、ミドル・ムスタファは恐怖で身動きが出来ません。このままでは男の鋭い歯に噛みつかれそうな勢いでしたが、男がさらにミドル・ムスタファに近づこうとした時に、男の姿が目の前から消えました。
長官の孫娘さん(通信機)-----大丈夫ですか?…みなさん無事ですか?今の人はまた転送して元の場所に戻しました。
ニヒル・ムスタファ-----多分、大丈夫だぜ。
Dr. ムスタファ-----ミドル・ムスタファは気絶しそうになってるがな。
ミドル・ムスタファ-----…あの、水をください…。あるいは、この部屋を探せば必ずあるであろう、強い酒の方が良いかも知れませんが…。
長官の孫娘さん(通信機)-----本当に申し訳ありませんでした。確実な方法だと思ったのですが、時空の混乱は予想以上だったみたいです。
Dr. ムスタファ-----時空の混乱?
ニヒル・ムスタファ-----それよりも、さっきの恐ろしいヤツは何だったんだ?
長官の孫娘さん(通信機)-----あれは…Little Mustaphaです。
一同-----エーッ!?(だワン!)