13. F.B.L.ビルディング・ペケファイル課の部屋
モオルダアとスケアリーはペケファイル課の部屋に戻ってきたが、ここに戻る途中に何が何なのか良く解らない感じのスケアリーは、モオルダアが何かに気付いておかしな理論を頭の中で構築しているような、そんな雰囲気なのが気に入らなかった。
ミライガミは、特に拘留しておく理由がないということで家に帰されたのだが、警察署を出る前に彼の連絡先を聞き、ペケファイル課の二人の連絡先も彼に知らせておいた。取調室で昔の事件の被害者の写真を見て飛び上がるほど驚いたミライガミが何も知らないわけはないのだし。
「一体どういう事ですの?」
部屋に戻るなりスケアリーが苛ついた感じでモオルダアに聞いた。ペケファイル課で何かを捜査をしている間の彼女は大抵の場合苛ついている感じなのだが、今回は明らかに自分の理解を超えたところで捜査が進行していることに対する苛立ちのようだ。
「どうしてミライガミはあの写真を見てあんなに脅えていたというんですの?」
「さあ。でもボクが調べたところによると、第二の被害者は誰かから情報を提供されて事件や事故が起きるのを知ったということだし、サキガ刑事も同じ誰かから情報を提供されていたと思うんだよね。そしてその誰かは今ではミライガミに未来の事件や事故を教えてるんだと思うんだけど」
「それが、あの写真に写っていた被害者だって言うの?でもあの方はもう亡くなっているんですのよ」
「そうだけど。でも死人なら監視カメラに映らずにマンションの部屋に侵入できるしね。とにかくあの写真に写っていた被害者についてもっと調べるべきなんだと思うけど」
スケアリーは死人が人を殺すなんて話は信じなかったのが、サキガ刑事の担当した事件の資料と第二の被害者の撮影した写真の両方に写ってた被害者は、この事件に何らかの関係があるに違いないとは思っていた。なので、ここは幽霊の話みたいなことをするモオルダアと言い争っているより、あの写真の被害者について調べるべきだと思って黙って頷いた。
二人があの写真の被害者について調べようとして、また資料を机の上に取り出した時モオルダアの携帯電話が鳴り出した。
「もしもしモオルダアだ。…そうか。それは興味深い話だな。…うむ。今すぐそちらに向かうからキミはその場で待機していてくれたまえ」
スケアリーはモオルダアがなんでそんな風に気取った話し方をするのか疑問に思ってしまったが、そこは考えても意味がないことだと思って気にしないことにした。
「誰なんですの?」
「ミライガミくんからだよ。これから事件か事故か起こるかも知れないみたいだぜ」
そう言ってモオルダアは部屋を出ていってしまった。
「ちょいと、モオルダア!?」
唖然とした感じのスケアリーは「だぜ」って何なんですの?と思いながらモオルダアの出ていった扉の方に向かって言ったが、すでにモオルダアはそれが聞こえないところまで歩いていたようだった。
スケアリーは仕方なく例の写真の被害者について調べる事にした。すると間もなく、ペケファイル課の部屋の電話が鳴り出した。