12.
何となく疲れ切った様子のエフ・ビー・エルの二人が森の公園の駐車場へ戻ってくると、誰かが県道から公園の中へ向かって歩いていくのが見えた。少し離れてはいたが、それが野々山葉菜であることはすぐに解った。
「野々山の家のことは意外とすぐに解るかもね」
モオルダアはそう言うと野々山葉菜のあとを追った。今彼らが調べている野々山と前を歩く野々山葉菜が同じ苗字と言う理由で血縁関係であると思っているモオルダアなので、野々山の家を知るには良い機会だとしか考えていなかった。それなので野々山葉菜がもうすぐ日が暮れようとしているこの時間に森の公園を歩いていることについては何の疑いも持つことはなかったようだ。
野々山葉菜はモオルダアのだいぶ前を歩いていて、もうすぐ公園内の曲がり角のところへ差しかかろうとしていた。前にこの森の公園で彼女を見かけた時には曲がり角を曲がったあとで見失ってしまったのだが、今回はそういうことがないようにモオルダアは小走りに後を追おうとした。
するとその時背後で車が動き出す音が聞こえた。何かと思って振り返るとスケアリーの乗った車が駐車場から出ていくのが見えた。スケアリーがイライラし始めたところに野々山葉菜が現れてしまったので、スケアリーの我慢も限界という事になったのだろう。
そういうことならここは自分一人で行動した方が効率が良いに違いないということで、モオルダアは車を追うことはせずに再び野々山葉菜の後を追いかけた。野々山葉菜はちょうど曲がり角のところにいたが、彼女が右のほうへ曲がっていくのは確認できた。
モオルダアは小走りに曲がり角のところへ行った。右を見ても野々山の姿はない。
「野々山さん」
もしかして道を外れて森の中へ入ったのかと思って、モオルダアは大きめの声で呼びかけてみた。だが何の反応もない。おかしいと思ってあたりを見回すと、さっきの道を左に曲がった方に野々山葉菜の後ろ姿が見えた。
「野々山さん」
モオルダアが再び呼びかけたが、聞こえていないのか彼女は止まらずに歩き続けている。このままだとまた次の曲がり角のところへ行ってしまいそうだ。モオルダアは走って彼女を追いかけた。
「野々山さん」
野々山葉菜が次の角を曲がって見えなくなりそうだったので、モオルダアがまた声をかけた。しかし、野々山葉菜は曲がり角の向こうへ見えなくなってしまった。
モオルダアは薄気味悪い何かを感じ始めていた。日が暮れる前の薄暗い森にいるというのも一つの原因かもしれない。だが、それ以上の何かがある。
果たして前を歩いていたのは本当に野々山葉菜だったのか?モオルダアはそんなことを考え始めていた。
モオルダアが走って曲がり角のところまでくると、野々山葉菜が曲がっていった先を覗き込んだ。なんとなく予想はしていたが、そこに彼女の姿はなかった。それを知ると同時にゾッとしてモオルダアの全身に鳥肌が立った。
何かがおかしい。モオルダアがそう思った時に目の前が真っ暗になり、彼は意識を失ってしまった。