13. 車中
車を発進させてからしばらくして、スケアリーはどうしてこんなに腹が立っているのかしら?と考え始めていた。
警察署の前で会ったあの野々山という女性。あの方の態度にどことなく鼻につくようなところがあるのは確かですわね。それにミョーにモオルダアに馴れ馴れしい態度を取っていたのも理由の一つかも知れませんわ。
そんな野々山を森の公園で見かけたモオルダアが、その後を追いかける姿。モオルダアは何を勘違いしているのか解りませんけれど。若い女性の前でフワフワしていやらしい目つきになっているのはいつものことですわね。それにそんなことにも慣れっこなあたくしなんですけれど。
それなら、どうして腹を立てて一人で車に乗ったのかしら。なんだかまるでモオルダアにヤキモチを焼いているように思われそうですわよ。そんなことはあり得るワケがないのですけれど。でも少しでもモオルダアにそんなことを思われるのは屈辱ですわ。あるいは、あの野々山って方がモオルダアにそんなことを言うかも知れない。もしかして、戻ったほうが良いのかしら?でも、そうした時にあたくしはなんて言い訳をするんですの?それに実際にあたくしがヤキモチを焼いたワケではないんですもの。
本来なら何か嫌なことがあっても、大きな心で全てを受け止められるのがあたくしじゃありませんこと?。ですから理由は他にあるにに違いありませんわ。
そう。問題は彼女の態度ですわね。あれはなんて言うのかしら?まるでこう…。男に媚を売るというやつですわ。
そんなふうに考えて、スケアリーは納得したようである。別に男に媚を売っても大きな心で受け止めて良いと思うにだが、スケアリーにとってそれだけは許されないことだったのだろう。あるいはそんな小さなことではなくて、もっと重要な何かがあるかも知れないのだが、自分が苛立っていることの理由をこれ以上考えるのは面倒になったので、考えるのをやめることにした。
とにかく、スケアリーは森の公園に戻ることなく、一人で警察署へと向かっていった。だが、それが正しい選択だったかは解らない。ちょうどその頃、モオルダアは森の公園で意識を失っていたのだ。