「回人」

02. 東京から北へ向かう車の中

 エフ・ビー・エルの(自称)優秀な捜査官二人の乗った車は、比較的空いている道を快調に北へと向かっていた。それとは裏腹に車内の雰囲気は快調とは言えなかった。

 車を運転するスケアリーは、新型コロナウィルス対策ということにして、モオルダアを後部座席に座らせたのだ。それで不快な思いをせずに運転できるはずだったのだが、後部座席にいてもモオルダアはモオルダアだったようだ。

 走行中に後部座席から見える「あそこのアレ」やら「さっきのアレ」の話を始める。後部座席とはかなり違う風景を見ている運転席のスケアリーはその「アレ」がなんなのか解らずに、モオルダアが口を開く度にイライラしないといけなかった。

 あまりにもイライラさせられるので、目的地までの半分を過ぎたあたりで、スケアリーはサービスエリアに車を止めて、モオルダアを助手席に座らせた。道に迷った時に地図を見てもらうという理由だったが、もちろんそんなことはこじつけで、助手席にモオルダアを座らせた方が、後部座席に座っているよりマシだと思ったからである。

 その成果があったのかどうかは解らないが、なぜか助手席に座るとモオルダアはあまり喋らなくなった。スケアリーもなんとなく安心してしまったが、それは間違いだった。

 目的地まであと一時間以内というところまで来た時、助手席からイビキが聞こえて来たのである。


 二人を乗せた車は山の方へ向かう曲がりくねった道を荒々しく進んでいった。