「回人」

29.

 この事件は最後にもうひとつの展開があった。エフ・ビー・エルの二人が帰ったあと、県警では署長の捜索を続けていた。何も見つからないまま数日が経った時に紀尾三刑事のもとへ良く喋る高齢の女性が現れたのだという。上品な身なりの女性が紀尾三に長々と話した内容は雑多で、紀尾三は始め何が言いたいのか理解できていなかった。だが女性が去った後、紀尾三が話しの内容を思い返しているうちにある重要なことに気がついたのである。

 紀尾三刑事は半信半疑ではあったが、数人の警官を連れて森へ向かった。場所はあの森の公園の近くだったが、タヌキたちが格闘していた場所とは反対側だった。紀尾三は聞いた話を元に目印になるものを見つけると、その辺りを掘り起こしていった。すると、驚いたとことに女性の言っていたとおりのものが出てきたのである。

 紀尾三刑事が掘り出したものは、白骨化した人間の遺体だった。更に周辺から見つかった遺留品らしきものからすると、そこに埋まっていたのは警察の関係者に違いないということだった。

 この人物が本来警察署にいるべき署長だったのではないか?と紀尾三は思った。正確なことが解るには鑑定の結果を待たなければいけない。しかし、それを待つまでもなく紀尾三刑事は今回の事件でやるべきことはすべて終わったような気がしていた。

 警官たちや行方不明になっていた被害者たちの意識を失わせたようなやり方を少し変えれば人間の命を奪うことも可能かも知れない。

 モオルダアはこの街が平和だと言っていたが、この白骨化した遺体はそれを証明しているのだろうか。

2022/09/16 (Fri)
the Peke Files #037
「回人」